Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
「おい片倉」
『はいっ、なんでしょう岩泉さん』
一通り練習が終わったあと、呼び止めた岩泉さんは後頭部をガシガシとかきながら言いにくそうに言葉を濁す。何か言いにくいことでもあったんだろうか。
「そのー、なんだ、京谷だけど」
『あ......はい、』
「戻って、きそうか?」
『んー、なんとも
色んなチームに飛び込みで練習してる
って噂は聞いたことあるんですけどね...』
何せ本人が話してくれませんから、と苦笑いすれば、カノジョにも言わないのほんと意味わかんないよね狂犬ちゃん、と及川さんが憤慨する。まぁ、気持ちも分からなくはない。
私たちが1年生の頃、当時の3年生に噛み付いて大揉めに揉めて、そうして京谷は部活に来なくなった。
『考えてみたら、もう1年以上経ちますし
そろそろ戻ってきてくれてもいいのにな〜』
「なんか、陽菜乃ちゃんやけにアッサリ?」
『そんなことないですよ花巻さん
京谷は“まじめにふまじめ”なんで』
そのうち戻ってきますよ、とにっこり笑えば、彼女が言うなら間違いないねとみんなが頷いてくれた。
私たちに足りないパズルのピース、それは攻撃力だ。岩泉さんでは力不足というのではない。もっと、もっと尖ったナニカが欲しい。それを京谷は持っている。
「でもさすがにそろそろ戻ってくんねぇと、
俺らも春高に向けて切り替えたいしな」
『松川さん...デスヨネ......』
「じゃあさ、陽菜乃ちゃんが
体育館まで狂犬ちゃん引っ張ってきてよ」
「及川のくせにいいこと言うな」
「岩ちゃん!?」
おー、と感心しながらサラッと毒を混ぜている岩泉さん。いつものやり取りにくすりと笑いながら、及川さんの提案を快諾した。目標は1週間以内に京谷を部活に引っ張ってくること。そしてそこで終わらないで、必ず練習に参加させること。
『私、今日から頑張ります!』
無理だけはするなよ、と岩泉さん。
陽菜乃ちゃんにしかできないお願い、と及川さん。
陽菜乃なら大丈夫と、花巻さん、松川さん。
こんな素敵な先輩たちが待っていてくれてるんだ。絶対に京谷をその気にさせてやるんだ。そう決意をみなぎらせたところでちょうど予鈴が鳴り、朝練は解散ということになった。