Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第2章 毒を以て毒を制す:二口
そのまま手近な空き教室に連れ込まれる。どうしよう、ドッキリ大成功だと思ったんだけど、やりすぎだったかな。二口は後ろ手にドアを閉めると、掴んでいた手を離す。だが二口はこっちに背を向けたまま。
『えと、にろ......?』
野球部はまだ練習らしく、ナイター用の照明が煌々とグラウンドを照らしている。教室の電気は付けておらず、外からの照明が逆光になって、二口の顔は見えにくい。
「片倉からは無いの、プレゼント」
個人的なヤツ、と二口。
『あ、ある、けど、今は持ってない』
「ちゃんと用意してくれたんだ」
顔は見えないけど、少しだけ嬉しそうな声。くる、と振り返った二口がずんと近付いてくる。びっくりして、思わず後ずさるが、じりじりとキョリを詰める二口に、ついに背中がドアに当たる。
至近距離で、二口と目が合う。あぁ、また、あの目をしてる。見てるだけで、心臓がドキドキして、でも今日は視線は逸らせなかった。
『ふ、ふたくち......?』
「なぁ、プレゼントさ、
今もいっこ欲しいんだけど、イイ?」
『ん?』
何をあげれば。
そう言おうとした口を、二口ので塞がれた。
視界いっぱいに二口の顔、目閉じてる、伏せられたまつ毛長い、前髪も伸びたな、肌綺麗。心臓のばくばくが止まらなくて、でも、突き放したくなくて、そのまま、柔らかくて優しい温度をずっと感じていたいとすら思った。
10秒か、それ以上か、あるいはもっと短かったのか。触れるだけのそれは、静かに離れていった。
「やば、お前めっちゃ顔エロい」
『へ、し、知らんし、何なの、もう』
二口とキスをした。その事実に、急に恥ずかしくなって、足に力が入らなくて、へなへなと床に座り込む。
悔しい、二口なのにカッコイイなんて。
「なぁ、やっぱプレゼントもう1個くれ」
『な、こ、今度は何よ』
「お前から好きって聞きたい」
しゃがみ込んだ私に視線を合わせ、真っ直ぐに言われる言葉。バレーしてる時と同じぐらい真剣なそれは、私の迷いなんて全部かき消してくれる。あぁ、こんなの、つい1週間前は言うなんて、思ってもなかったのに。
好き。
今度は私から。手を伸ばして、綺麗な唇に自分のを重ねた。