Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第2章 毒を以て毒を制す:二口
そして迎えた放課後、職員室に用事があるという舞を、昇降口の段差に座って待つことにした。ホームルーム終わって15分ぐらい経つけど、まだ来ないのかな。
「片倉」
『ひっ、あ、お、ふ、二口…』
「んだよ、そんなビビることねぇだろ」
俺は幽霊か何かかよ、と言いながら上履きを靴箱にしまう。ボンッ、と、スニーカーを置いた音が、やけに響く。
昨日の今日で、顔を見られない。声を聞いて思い出す、昨日の別れ際のあの視線。まるで、私のことを好き、みたいな、顔。意識すればするほど、顔に熱が集まって、あつくてあつくて、顔なんて上げられなくて。
勘違い、してしまいそうになる。
『ふ、二口は、』
「ん?」
『彼女とか、作らないの』
我ながら突拍子もないことを聞いたと思う。膝を抱え、俯く私。それから、どかっと隣に座る気配。
「まぁ俺も高校生だし欲しいけど、
でもなって欲しい奴、1人しかいないし」
半顔だけそっと左を向けば、自分の膝を支えに、頬杖をついて、こちらを見る二口。また昨日と同じ目をしている。
二口とはそんなこと考えたことなくて。ただ、しょーもない口喧嘩して、ハブとマングースみたいにお互い天敵で、嫌いじゃないけど好きじゃない、ただ、部活が同じだけ。そう、思ってたのに。
そう、思っていたかった、のに。
「誕プレ、俺期待して待ってていい?」
『ふ、二口がそんなに素直だと、
なんか、調子狂うなぁ、はは…』
上手く、話せない。落ち着かなくて、やっぱり目を逸らして、左耳に髪をかけた。早く来て、なんで舞は全然来ないの用事長すぎるって、もう私無理だよ、心臓が爆発しちゃいそうなんだよ。
「……もっと調子狂ってよ」
『えっ』
思わず二口の方を見て、しまったと思う。
「そんで、俺だけ考えて」
す、と手が伸びて、左頬にかかっていた髪を耳にかけられる。他人の手の感触に、ぞわりとする。すり、と耳たぶをなぞられ、普段だったら触るな変態って手を跳ね除けるのに、どうしてだかそれも出来なくて。
ただ、二口から、目が離せなかった。