Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第2章 毒を以て毒を制す:二口
そう言えば、二口と2人で帰るのは久し振りだなと思う。前に帰ったのはいつだったか、うーんと考えていると横を歩く二口が名前を呼んだ。
「片倉はさ、」
『ん?』
「鎌先さんの誕生日、あげんの?」
『あ〜、まぁ、お菓子とか…』
そうじゃなくて、と遮られる。
「なんか、個人的なヤツだよ」
『個人、的な、?』
なんでコジンテキなプレゼントをあの人にあげなきゃいけないんだよ、あ、あの人って言ったら失礼か。
『別に、あげないけど』
「そっか、良かった」
何が、良かったんだろう。また無言になって、街灯の下を、2人で黙々と歩く。歩道の無い道、急に坂を下ってきた自転車にビックリすれば、お前こっち側にいろと車道側に割り込む二口。
なんだか、二口がいつもと違う気がして、心臓が少しだけ早くなる。ちら、と横目で二口の様子を窺えば、いつもみたいな気難しいぶっきらぼうな顔。私だけが変なのか、と思い、リュックの肩紐をギュッと両手で握る。
『じゃ、私、こっちだから』
青根がいる時も別れる、いつもの交差点。おつかれと言って背を向けた瞬間、リュックの取っ手をがっしと掴まれた。
『ぐぇ、』
「なぁ」
蛙が潰れたみたいな声出た。リュックの肩紐が食い込んだ部分を擦りながら、二口を振り返る。
「俺には誕プレ、寄越せよ」
『え、うん、あげるけど』
「言っとくけど、個人的なやつだからな」
『う、うん……?』
お前ぜってぇ分かってねぇだろ、と言われ、正直分かってないですと頭を下げた。これだから鈍い奴は、と唐突にデコピンをされ、しかも本気のやつで、おでこを抑えてうずくまる。
『イッッッッタ!?』
「鎌先さんにあげないで、俺にくれ、って
言ってるんだけど、お前意味分かってる?」
『へ…?』
ジンと痛むおでこを右手で抑えながら、咄嗟に顔を上げれば、同じく目の前にしゃがみ込んだ二口と目が合う。
少し、拗ねたみたいな顔。ほっぺた、赤い。
見た事無い、目。
「考えとけよ」
くしゃ、と頭を鷲掴みにされ、そのまま1人坂を下って行く二口。言っていることはよく分からなかったけど、じっと私を捉えていた目が、脳裏にこびりついて離れなくて。
その日は、日が昇るまで寝付けなかった。