Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第2章 毒を以て毒を制す:二口
なんとなくちょっと変な空気で別れた翌日。
いつも通りうとうとしながら4限を終えて、自販機に飲み物を買いに行こうと眠たい目をこする。と、廊下側に席のあるクラスメイトの一軍男子に名前を呼ばれる。行くか行かないかで動きたくないのが勝って、窓側の端っこの席から返事を飛ばす。
『なーにー山田ぁー』
「片倉の愛しのダーリン来てるぞ」
パッ、と、クラスの視線が一瞬集まるのを感じた。あいつまじ、ほんと余計なことしか言わないな。ただそれもほんの数秒で、すぐに元のざわめきが戻ってくる。
『彼氏なんかいませんけどー』
「馬鹿、お前変な事言うなよ…」
ダーリンって誰だよ、と思って仕方無くそっちに向かえば、気まずそうな顔をした二口。ニヤニヤする山田に感情のこもってないありがとうを伝え、廊下に出る。
ちょっとこっち来い、と手を引かれ、あぁこれじゃあまるで本当に昼休みに彼氏が彼女を呼びに来たみたいじゃないか、と思いながら、引かれるままに走った。
後ろから見上げる二口の耳は、少しだけ赤かった。
購買の横、自販機の所で二口は立ち止まる。選べよ、と言われ、なんでと思いながらブレザーのポケットから小銭入れを取り出す。
「ちげぇよ、俺が払うからいいんだよ…
で、片倉はどれ飲みたいの、選んで」
『んー、じゃあレモンのやつ』
んだよ一番高ぇヤツじゃんと文句を言いながらも、ガコンと音を立てた取り出し口に出てきた冷えたボトルを二口は渡してくれた。
にろが奢ってくれるなんて明日槍でも降るんじゃないの、と晴れない顔を覗きこめば、そうじゃねぇよとそっぽを向く。
「昨日、ひでぇこと言っただろ」
『なんだ、自覚あったんだ』
「そりゃ、お前が声低くなるのって、
まじで怒ってる時だけだからな…」
『気付いてたんだ』
「気付くだろ、そりゃ、」
仲間なんだから。
ガシガシと、後頭部をかきながら飛び出したその言葉。自分の目が見開かれ、それからちょっと、視界が滲むのが分かった。
緩む口角。そうだ、にろはこういう奴だ。
『次やったらスタバね』
「急にたっけぇな」
互いに放った照れ隠しの言葉は、まるでいつものじゃれあいみたいだった。