Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第2章 毒を以て毒を制す:二口
先日の春高代表決定戦では惜しくも青葉城西に負けた、我ら伊達工。鉄壁にさらに磨きをかけるべく、日々練習に励んでいる。
現在マネージャーは2年生の2人、実は部活内での役割もちょっと違う。舞は明るいしデータをまとめるのも上手いから、献身的なサポートメインって感じ。一方の私は中学の経験者って言うこともあって、簡単な試合の笛を吹いたり、1年生の練習に付き合ったり。
そんな訳で、今日も体育館には私の怒号が飛び交う。
『こら黄金川!バンザイブロック!
またスパイクぶち抜かれたいんか!』
「すんません!」
ちょいちょいと手招きすれば、猫背になって恐る恐る歩み寄る黄金川。
『ちょっと腕構えてみ』
「こうすか?」
『ほら、跳んでないのにもう開いてる、
手の構えが高いんだよ、肩の位置にしな、
このままだと跳んだ時に腕広がっちゃうよ』
ブロック前、手の構える位置が悪く、バンザイしている黄金川。やはり両腕がやや外側に開いており、バレーボールを放れば腕の間をぬけて後ろに落ちていく。
手はこう、足はこう、あとは隣のタイミングと声掛けて合わせること、そう伝えて練習に戻した。
Aチームからのサーブ、Bチームレシーブ、トスちょっと高い、黄金川の構えは悪くない、青根と2人で跳ぶ、そんで。
バチィン、と派手な音を立てて、二口のスパイクは黄金川の左腕に当たった、どんぴしゃだ。
『よーっし、黄金川いいよ!それそれ!
もっと二口止めろ全部止めちまえ!』
「ハイッ、アザーッス!」
「俺とばっちりなんだけど、なぁ!」
舞と監督が苦笑いしているのが視界の端に映る。そうだ、そうやってどんどん黄金川は強くなればいい、そんで、そういう貪欲さは、負けてらんないって他のプレイヤーにも飛び火する。
悔しがってても何も始まらない。選手たちが頑張っているのなら、私もできうる全力でそれに応えるだけ、それは舞も一緒だ。
ほらほらもう一試合やってから終わるよと、拍手をしながら皆のケツを叩く。多くが高卒で働くうちの高校、残されたチャンスは、インターハイしかないんだ。
絶対に、掴み取ってやる。