Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第2章 毒を以て毒を制す:二口
毒を以て毒を制す、とはどう言う意味か。
そう、現代文の教師は問うた。窓側の席、差し込む柔らかな秋の日差し。ウトウトと眠たい5限の頭を右から左に突き抜けていく授業。
こちとら卒業したらすぐ就職するために工業高校に来ていると言うのに、数学やら工学だけでは許してくれないらしい。女子にしては珍しく、昔から数学だけは得意だった。
「片倉ー、眠たい顔してるぞー」
眠たそうにしている生徒に、気合入ってるかーと尋ねるのがお馴染みのこの先生。謝罪ても肯定しても怒られるのは既知なので、諦めて今気合い入れましたと背筋を伸ばす。
よしよしと頷いて授業に戻る先生が背中を向けた途端、私の背中はすぐに猫背に元通り。早く放課後が来ないかなぁと思いながら、私は襲い来る睡魔に勝てずまぶたを下ろした。
放課後、隣の席の滑津舞に起こされ、ホームルームまで爆睡を決め込んだことを知った。
『ごめん舞、なんか連絡事項あった?』
「特になかったけど、
今日の陽菜乃は眠り姫ですねぇ」
『うるさいなぁ、仕方ないじゃん、
昨日ネトフリ見すぎて寝たの3時で...』
寝起きにもかかわらずあくびが止まらない。目を瞑り、くぁ、と口を開けてあくびを1つすれば、後ろから失礼な声。
「おま、ぶっさ、ブサイクに拍車かかってんぞ」
『は?覗き込むなや、
きっしょ、なんやねんにろ』
「ふたくちな、そろぼち覚えろ?」
なんべんこのやり取りすんだよ、それは二口くんがにろって名前に改名するまでじゃない、んだとコラ、暴力反対二口変態、後半ただの悪口だろ。
もはや日課になったこのやり取り、男子バレーボール部主将のにろの改め、二口堅治と私の減らず口合戦──いつだったか舞が命名した──は今日も健在である。
うちの高校は工業高校で、ほぼ女子が居ないから、女子だけの部活っていうのもあんまり無くて。暇を持て余していたら、1年の時にクラスメイトの舞に誘われて仕方無く入った男子バレー部。
初めは半ば義務感のように感じていたそれも、今では居心地良くて。気付けば、自ずと放課後を楽しみにしたいた、それで学校の楽しみの、半分ぐらいになった。