Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第6章 記憶から消してもいいですか!:北
自転車に跨り、ペダルを踏みしめて坂道を登っていく。いつもだったら近道を行ってしまうところ、北先輩に言われた通り、明るくて犬の散歩も多い方を選んだ。
家に着くまでのほんの十数分やのに、心臓のバクバクが止まらへん。あかん、今日も大好きや。いつかと同じように階段を駆け上がり、震える指でスマホのロックを開く。
『や、やばい、北先輩が、好きが止まらん…ッ』
トークアプリを慌てて開き、文面を入力していく。
北先輩がかっこよすぎてどないしよう、さっき一緒に帰ってたんやけどな、疲れてたんかうとうとしてしもて、可愛ええなって言ってくれてん。
北先輩って実はよく笑てるし、尾白先輩とかといる時の笑顔すら眩しいのに、それ真横でやられたんやけど、明日命日か何かなんかな。
最後ホームに降りたあとも手振ってくれて、明るいとこ通って帰りやって言ってくれて。
好きが止まらんのやけど、大洪水や。
そんな文面を、4つか、5つか、送って。画面を開きっぱなしにしたまま、枕に顔を突っ伏して悶える。今日の北先輩はほんまにあかんかった、もう全日本イケメンランキングぶっちぎりで優勝できる。
深呼吸を少しして、枕から顔を上げて、スマホの画面を見る。私が送ったメッセージの横に、既読の文字。いつもなら、何件既読になってる、という数字もあるはずのそれは、無い。
『え、誰が見たんやろ、ぇ、あ、れ?』
トークルームの1番上、私が命名した“北先輩だいすきクラブ”の文字があるはずのそこには、“北先輩”とだけ書かれている。
『ま、待って、これ、北先輩……!?』
混乱する脳内、でも北先輩との個人トークという事実は紛れもない。やらかしてしもた、あの文章、北先輩どない思ったやろか。気持ち悪いとか、恋愛なんかに浮かれよってみたいな、そんな。
そんなこと思われて、嫌われてしもたら、どうしよう。
咄嗟に動いた右手は、急いで送信取り消しを押す。けれど、そんなのは焼け石に水というか、覆水盆に返らずというか、既読になって北先輩が読んだことは変わらないし。
自転車に乗っていた時よりも跳ね回り、爆発しそうな心臓。手の中でヴーヴーと振動して着信を知らせるスマホ、画面には北先輩の文字だった。