Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第6章 記憶から消してもいいですか!:北
『ほんでな〜、北先輩最後なんて言ったと思う?』
「ノリで入籍してみたらええやん」
朝から元気いっぱい夢いっぱいの私の餌食になって、やる気なく答えるのは角名。残りの3人は私の惚気が始まると早々に逃げ出して、さっさと朝練を始めやがった。
この場合、多分3人の方が正しいんやけどね。
『ちっがぁう、おやすみって言ってくれたの、
やばくない?付き合ってる錯覚すら覚えたよ?』
「へぇ、ところで今日の昼みんなで食う?」
「「「今日はパス」」」
『じゃあ角名と食うからええよ、
女子会やからお邪魔虫3人どっか行っといて』
「俺に拒否権は無いん?」
角名ぐらいにしか頼めないことやからお願い、と手を合わせれば、1回北先輩トークする代わりに自販機で1本奢ることになった。悔しいけど仕方ない、必要経費だ。
間もなく始まった朝練、練習メニューに合わせてタイマーをかけ、ホイッスルでメニューを切り替えていく。声を出し合いながら黙々とこなしていくみんなを見ていく。フリをしながら、私はただひたすらに北先輩を視界に収めている。
うちの朝練は軽いウォームアップと基礎練がメインで、ラスト15分は好きなメニューをやっていい事になってる。北先輩はというと、今日はウェイトトレーニングをやってる。ほんのり汗をかいているその姿すら、一等星の輝きを遥かに超える眩しさ。
『今日もかっこえぇ...』
「陽菜乃、さっき捻ったんやけど、
今日一日テーピング巻いておいてくれん?」
北先輩に見とれていると、ひょこひょこ右足を庇って歩く銀島。珍しい人が捻ったなぁと思いつつ、シューズと靴下をもぎ取って患部を見れば、そんなに腫れてはいない。けど、熱感が少しある。
『こんぐらいなら冷やしてテーピングでええわ、
氷そこにあるから氷嚢作るわ、ちょい待っててな』
「すまん、頼む」
青い氷嚢にクーラーボックスの氷を詰め、ポケットのハンカチを患部に当てた上から氷嚢を弾性包帯で固定していく。同じクラスの侑にも介抱を頼んで、私は北先輩に報告。
『...という訳で、
一旦銀島は練習休みで様子見ますね』
「分かった、ありがとうな」