Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第6章 記憶から消してもいいですか!:北
部活が終わると、寮生じゃない私はみんなと別れて一人帰路につく。仲良し4人はみんな寮やから、いつも私だけひとりぼっち。少しだけ寂しいから、イヤホンを繋いで音楽を聴きながら歩くのが日課だったりする。
高校から最寄りの駅へは歩いて10分ちょい。乗り換えを挟んでだいたい30分、そっから全力でチャリを漕いだら家までは5分ぐらい。
今日の北先輩も麗しかったなぁと思いながら、スマホでいつものメンツに連絡を飛ばす。私の中のハイライトは“クラスメイトと楽しそうに体育に励む北先輩”だった。その旨を送ったところで、とんと肩を叩かれて振り返る。
「片倉、1人なん?」
『わっ、き、北先輩』
お疲れさん、と言ってごく自然に隣に並んで歩き出す北先輩。慌ててイヤホンを耳から引っこ抜いて、スクールバッグにスマホごとぶち込む。液晶が傷つこうがなんだっていい、だって隣に北先輩がおるんやもん。
『アラン先輩が居ないの、珍しいですね』
「今日はなんや家の用事らしいで」
『そう、なんですね』
「片倉はいつも1人で帰ってるんか」
『仲良い2年はみんな寮生なんで、
必然的にぼっちになってしまうというか…』
ははは、と乾いた笑いをこぼすと、笑い事とちゃうやろと語気を強める北先輩。一体どこに怒る要素が。
「年頃の女の子があかん、
明日から俺が駅まで送ってったろ」
『いっ、いや、そんな、北先輩の手を
煩わせるなんてそんなこと私には…!』
「前から思うてたけど、
片倉は俺のことなんやと思てるん?」
どこまでも下手に出る私に、北先輩は面白そうに笑う。あぁ、この笑顔で私は白ご飯3杯はいけるんですけども、どうでしょう。
その後も、なんとしてでも駅までは送りたい北先輩と、(隣を歩くのが恥ずかしくて死にそうだから)ひとりで帰ると言い張る私とで押し問答を繰り広げる。そうこうしているうちに、駅まで着いてしまった。
『じゃあ私、こっちなんで』
「奇遇やな、俺もや」
『北先輩もはずれの方に行くんですか?』
「そうや、せやから一緒に帰ろな」
約束やで。
そう、微笑まれれば、北先輩にぞっこんな私には断れる訳もなくて。次の日から、北先輩と一緒に帰り道を歩くことが決まるのだった。