Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第6章 記憶から消してもいいですか!:北
そして放課後、ミーティングは粛々と進み、新キャプテンを北先輩が務めること、今年度の目標も“全国優勝”に変わりは無いこと、年間の大まかな予定などが伝えられていく。
そしていよいよ、スタメン発表。番号順に名前を呼ぶからマネージャーからユニフォームは受け取ってくれ、と黒須監督が告げ、緊張が走る。目の前に体育座りするみんなの表情も固い。
去年は1番を着ていたのはキャプテンだった。だからといって北先輩がそうとは限らないかもしれん。それでもどうかと、願ってしまうのは、エゴだろうか。
「1番、北」
どっきんと、心臓が暴れる。嘘、北先輩の名前、1番、どないしよう、ユニフォーム渡さないと、何か言葉をかけないと。でも、目の前に来た先輩の顔を見て、そんなのは全部吹き飛んだ。
いつも通りの表情。それなのに、唇をきゅっと固く結んで、目がほんの少しだけうるんでいて。ユニフォームを手渡すと、少しだけ震えた声で、ありがとうと言った。
その後も次々に名前が呼ばれていく。北先輩は、戻って座った後、それはそれはごく静かに、けれど確かに泣いていた。
『みんな、ユニフォームおめでとう』
「俺ら全員もらえると、さすがに嬉しいな」
「みんなで飯でも行こか?」
『サムはすぐご飯の話しよる』
ミーティングの後、部室の出口でみんなのことを待っていると、ユニフォームを抱えた4人が戻ってくる。
北さんはええの、と角名に言われて、首を横に振る。あれ、と私の指を差す方には、アラン先輩と並んで歩く北先輩の姿。さすがに今日はおじゃまできひんやろ、と言えば、確かにと同意の声。
『いいんだ、北先輩は見てるだけで』
「ほんまに?
いつもあんなにグルで惚気けとるくせに?」
「オカンでも彼女でもないやつが、
可愛いだのカッコイイだの騒いどんのに?」
『双子やかまし!
今日、ユニ配った時、北先輩泣いとったやろ』
私にはあの涙が、すごく綺麗に思えて。
ひたむきに、努力しても、報われないことはたくさんあるけど。北先輩は、頑張ってればいいことあるよって、教えてくれたみたいで。
『そやから、私は北先輩が引退するまでを
見届けるだけでじゅーぶん幸せモンやと思う!』
ニッと桜にも負けない大輪の笑顔を見せれば、陽菜乃が言うならとみんなも笑ってくれた。