Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第6章 記憶から消してもいいですか!:北
北さんこいつ息してません、それはあかん救急車呼ばな、その前に人工呼吸とAEDです、ほんなら俺がやる。ぼんやりと、そこまで聞こえたところで、遠のいていた世界の音がぐんと帰ってくる。
『ハッ、えっ、北、せん、ぱ…』
「ん、起きたか」
視界にバッチリ映るのは、北先輩のご尊顔。そして、その後ろでにやにやと笑う角名の顔。
「立ったまま動かんくなったから、
気ぃ失ったんかと思たけど、大丈夫か?」
『は、はひ…っ』
「熱あっても困るし、今日ははよ帰り」
首がもげそうなぐらい、北先輩の言葉に頷くと、そんなに元気なら大丈夫かもなと優しく笑ってくれる。思わず、好きって言いそうになって、口の中で飲み込む。
ほなお疲れ、と言って体育館を後にする北先輩の背中に、お疲れ様ですと特大の挨拶をぶちかます。それから、ぐるんと笑いを堪えている角名を振り返りその肩を掴んでガクガクと揺さぶる。
『あんた何考えてるんいよいよ頭おかしなったか
北先輩が笑てくれたからええけど、まじ、なん、』
「はっ、は、ちょ、待って、陽菜乃…っふ」
『もう心臓に悪い嫌や角名なんて嫌い〜』
銀島助けて〜と双子と話しているその背中に隠れると、不機嫌そうな顔をした角名が、銀島を見下ろす。
それを見た銀島は、またそこ2人喧嘩したんかと苦笑い。
『今日のは絶対に角名が悪いもん』
「俺は陽菜乃のお手伝いしただけやろ」
『どこがよ!』
「可愛いって言われて、
意識飛んでたんどこの誰ですかね〜」
「はいはい、そこまでにしとけ、
先輩も後輩も見とるやろ、な?」
がるるると角名に威嚇する私を銀島がなだめてくれる。双子も今日のは角名がちょっと意地悪だったんやないのと珍しく同意してくれて、その場は和解した。
「まぁでも、陽菜乃もそこまで北さんに
本気なんやったら俺らも手伝うで、なぁサム」
「俺は別にええけど」
『ほんまに!?めっちゃ助かるんやけど!』
ありがとうありがとうとツムとサムの手をぎゅっと握って振り回し、そのままスマホでグループを作った。“北先輩だいすきクラブ”というそのトークルームでは、その日から私が北先輩のことを永遠と話す場になるのだった。