Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第6章 記憶から消してもいいですか!:北
そうして、私が1年生の間は北先輩にユニが渡されることは無いまま、2年生になった。大会の前に全体ミーティングで登録選手を読み上げるあの時間が、楽しみなのに、いつしか複雑な気持ちになっていた。
北先輩に限らない。うちの部活は大所帯だから、ユニフォームが貰えない人なんてたくさんいる。みんなの頑張りを知れば知るほど、この競争社会から目を背けたくなった。
それでも、部活は毎日やってくる。
「んで、陽菜乃はまだ北さん推しなの?」
『もちろん、当たり前よ』
部活終わり、インハイ予選前のゴールデンウィーク遠征で使うテーピングを用意していると、角名が話し掛けてきた。手には先程もらった遠征のプリントを握っている。
「彼女になりたいとかは、無いわけ?」
『いやいやそんな、私ごときが北先輩の
彼女なんてそんなぁ、おこがましいですぅ』
「全然そんな顔じゃないけど、なりたそうやん」
『んんんんいや、なれたら嬉しいけど!』
けどそんな私個人の思い出なれるもんやないし、そもそも北先輩って彼女いないのかな、待ってあのお顔なら彼氏さんがいてもおかしくないやろか、うわぁどないしよ。
ひとりであれこれ考えて、マシンガンのように話していれば、これだから限界オタクはと角名は呆れ返っている。
「あ、いい所に、北さんちょっと」
『ちょ、す、角名?』
たまたま横を通り掛かった北先輩を呼び止めると、角名はちょいちょいと手招きをする。てかこいつ先輩に何してるん失礼すぎやろお前が出向くもんやで普通。
「角名、片倉、どないした?」
「北さんって、
今付き合ってる人とかいるのかなって」
『すすすすすすすすす角名は馬鹿なの!?』
「はは、ええよ、片倉」
そら高校生やもんなぁ、と笑う北先輩。部活に関係ない話しよって、とかって怒られると思ってたから、私も角名も、すっかり拍子抜けしている。
「2年は、よくそういう話するんか」
『えぇと、双子の浮ついた話ならします』
「そうかぁ、あいつらもやけど、
片倉も可愛いからモテそうやなぁ」
『あっ、え、そう思います?』
「うん、可愛ええ」
にこ、と初めて見るレベルで北先輩が笑う。心臓が、ぎゅんと音を立てて、爆発するかと思った。