Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第6章 記憶から消してもいいですか!:北
北先輩と私の出会いは、高校に入学してすぐだった。
桜舞い散る入学式、型にハマった生徒会長の挨拶よりもぶっ刺さったのは、部活動紹介の時の挨拶で。背も高くなければ、ガタイが特段良いのでもなくて。
ただ、そのしゃんと伸びた背筋と、真っ直ぐな視線と、落ち着いた声と言葉が、私の世界の全てを塗り替えた。
『かっこええ………!』
気を付けありがとうございました、とその人が言うと、アリガトウゴザイマシタと声を揃える男子バレーボール部。壇上から捌けていくその背中を、見えなくなるまで見送る。
名前はまだ知らない、けれど顔は覚えた。
2年の先輩で、背丈はこんくらいで、毛先だけちょっと黒い白っぽい髪の男の人。クラスは分からんくても、バレー部に入れば絶対にお近付きになれるやろう。
そんな、甘っちょろい考えをしていた自分をぶん殴りたいと思ったのは、高校1年生で早くも迎えたインターハイの全国大会の舞台やった。
『ウソ…
北先輩って、レギュラーじゃないん…?』
稲荷崎の運動部は強いとこが多いから、レギュラー争いも激しいんは予想してた。実際、マネージャーとして潜入、いや、入部してからも目まぐるしい毎日だった。
稲荷崎のバレー部には久しくマネージャーが居なかったというのもあり、過去の記録は数年前のものばかり。手探りな部分も多い中、同級生も、先輩も、みんな良くしてくれた。
まさに、青天の霹靂。
『なぁ、ツム、嘘やろ、
なんでアンタにユニあって北先輩に無いん』
「俺に聞くなや、ポジションちゃうんやし」
『サムは?どう思う?』
「北さん、下手やないけどなァ」
1年男バレの溜まり場、外階段の踊り場で双子にそう問いかける。ちなみに、角名と銀島は今日は不参加らしい。
双子は1年生だけど2人ともユニ持ちだから、そういう人選的なの知ってるんかなと思ったけど、どうやらそうでも無いんやな。
『私は北先輩のユニ姿が見たいんに…』
「元気出せや、おにぎり食う?」
『うん、食う』
「陽菜乃は色気より食い気やな」
『どうして同じ遺伝子なのに、
こんなに天と地の差があるんだろうね』
「喧しいわ!」