Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
エレベーターでバイバイして、角名くんと別れて部屋に入る。緊張でもしていたのか、それがほどけてふっと楽になって、玄関の上がり框に腰掛け、少し呆けてみる。
ヴヴとスマホのバイブレーションが鳴り、なんだろうと開けば、角名くんから。晩ご飯食べたら教えてとの事で、あぁいよいよかと思ってしまう。寮生は17~21時までに食堂に行けば、毎日晩ご飯が用意されているので、なるべく被らないタイミングで行きたい。
とりあえず、部活で汗もかいたからと思ってシャワーを浴びる。なんとなくいつもより念入りに洗ってみたし、なんとなくムダ毛大丈夫かなって全身見たりして、いつもの倍の時間をかけてシャワーを終える。
『な、なんか、もう心臓が...』
無駄に期待してるだけだったらどうしよう、と思いながらもそわそわしている自分がいることに気付いてしまう。そもそも、向こうが言い出したこと、そう、私は巻き込まれている。
そう思い込ませるように繰り返せば、幾分か早鐘を打っていた心臓も落ち着いてきて、時計を見れば16時。少し休んで、明日の課題とか確認してから食堂に行こう。
今日の晩ご飯はなんだろう、と少しだけワクワクしながら階段を下りていく。階が低くなるにつれ、食堂からの炊きたてご飯と焼き魚の香ばしい香りが漂ってくる。
「あら新入りの、なんたっけな、
陽菜乃ちゃんやったっけ、いらっしゃい!」
入寮して2日目とは思えない距離の詰め方をしてくる、フレンドリーなおばちゃんが手招き。今日はちょっと時期早いけど秋鮭がいいの入ってたから塩焼きにしたのと、手際よく盛り付けてくれる。
今日もご飯ありがとうとお礼を伝え、端っこの方に陣取り、いただきますと手を合わせる。噛めば噛むほどじゅわっと旨みの溢れる鮭を堪能していると、入口の方から聞き慣れた声。
「りんちゃん、今日来るの早いなぁ」
「まぁね、おばちゃんに会いたくて」
やだもうご飯大盛りにしちゃう、なんて冗談を言い合っているのは、紛れもなく角名くん。お膳を受け取ると、迷うことなく私の方へと向かってきて、当たり前のように隣に座る。
「陽菜乃、いる気したんよね」
『倫太郎、千里眼持ち...?』