Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
結局、なんだかんだ私は作業が終わらなくて、角名くんも2年生と練習したり、1年生に指導をしていて、体育館から出たのはギリギリの15時だった。明日は普通に朝練から学校があるし、帰ってゆっくり休もうと双子と銀くんとは校門で別れる。
私と角名くんは寮なので、一緒に帰る。と言っても、ほんの数分で着く距離なのだが。角名くんはこういう短い時間でも、手を繋ぎたいらしく、気が付けば私の右手は角名くんの左手に捕まっている。しかも、ちゃあんと恋人繋ぎ。
なんでも角名くんに言わせれば、“陽菜乃は無自覚で愛想振りまくし転校してきてから地味に人気あるから油断ならない”らしい。何が油断ならないのか、そもそも角名くんから略奪しようなんて猛者がいるはずない。
『ねぇ倫太郎、私、手汗かいてない?』
「かいててもかいてなくても、
俺が陽菜乃と手を繋ぎたいだけやからいい」
『そ、ならいっか』
角名くんのストレートな物言いは、今に始まったことじゃないが、急に来るとこう、心臓をグワッと鷲掴みにされたような気持ちになるんよなぁと、心の中でひとりごつ。
照れ隠しにぎゅっと繋いだ手に力を込め、ぶんぶんと子供のように振り回せば、角名くんも握り返してくれた。
そう言えば、と思い出したのは、今朝方北さんに言われたあのこと。確か首に何かついてるって言うてたぁとぼんやり頭の片隅に残っている記憶を引っ張り出し、角名くんに聞いてみる。
『なぁ、北さんに首に何かついてるって
言われて、それ倫太郎がやったって言うんだけど』
何かしたの、と首を傾げると、陽菜乃はソッチ系のことには疎いなぁと目をきゅっと細める。
「それ、キスマークって言うやつ」
『あぁ...え、まさか玄関でキスしてきたんは、』
「陽菜乃が警戒心無いからさ、虫除け」
虫除け、ってそんな大袈裟な。そう思ったところで、気付く。まさか、練習始まる前に侑くんが逃げるように体育館に走って行ったのって、これに気が付いたからだったりして。
もし仮に、あの行動の意味がそうなのだとしたら。角名くんの言う虫除けは大成功なのではなかろうか。
目の前でご機嫌そうな彼に、いよいよ私は本格的にヤバいかもしれないと思い始めていた。