第15章 裏切りのステージ〜プロローグ〜
ーー降谷side
僕は今、バーボンとして波土という人物に会いに来ていた。一緒に来た相手は梓さん、ではなく梓さんに変装したベルモット。ASACAという名前について調べるためだ。
雪「えっ、安室さん?」
安室「雪!……さん?」
名前を呼ばれて振り返ると雪が知らない男と並んでいた。聞けば弓道関連の友人でアイドル活動もしていると、雪の肩を抱きながら話す彼に嫌な気持ちを覚えてしまう。
安室(馴れ馴れしいな……)
そんな事を思っていると雪は彼の手を払い退け雑誌記者を指差す。アイドルの熱愛報道でもしようと思っていたのだろう、ニヤニヤした顔で雪達を見ていた。
秋永「ネタにするのは良いが、その時は覚悟しとけ」
アイドルとは思えない怒りの表情を見せた秋永という男、彼もまた彼女が大切なのだろう。それにもしスクープになったとしても公安の圧力で抑えるだけだ。
梓(ベル)「気に入らないわね、あの男」
雑誌記者を見つめながらベルモットは消してしまおうかしらと薄い笑みを浮かべる。
安室「彼女を気に入っているんですか?」
梓(ベル)「個人的にね、彼女は良い子だから」
雪と何処かで出会っているという事にも驚きだか、優しい目で彼女を見るベルモットにも驚いた。
安室「以前、彼女と出会っているんですか?」
梓(ベル)「……貴方に言う必要は無いわ、個人的に気に入ってるだけだから」
本当に個人的な事なのだろうか、だが黒の組織のメンバーの1人に目を付けられている。どこで出会ったのだろうかと疑問に思っていたが雪に視線を戻した瞬間、それは事は吹き飛んでしまった。
雪「ち、近いです……昴さん」
沖矢「これは失礼」
雪に顔を近づけている沖矢昴の姿が目に飛び込んできたからだ。彼女は沖矢昴から少し距離を取ると一緒にいた友人の話しを始めた後、僕は彼女の所へ向かい聞きたかった事を聞く。
安室「お付き合いはしてないんですね?」
雪「もちろん!……って安室さん⁉︎」
僕に気付いていなかった彼女は目をパチパチとして驚いていた。その表情がとても可愛くて抱き締めたくなる気持ちを必死に抑える。
安室「なら良かったです」
雪「良かった?」
安室「いえ、気にしないで下さい」
頭にハテナを浮かべる彼女に、苦笑いしながら気にしないでと伝える。雪本人から付き合っていないと確認が出来て安心したからだ。