第10章 ベイカー街の亡霊〜ホームズが居なくても〜
ーー貴方side
コナン君が裏口に向かってから暫く経った時だ、一発の銃声が聞こえた。それを聞いた元太君が居ても立っても居られなかったのか店内へと向かう、私も行くべきかと足を踏み出そうとすると手を掴まれた。
灰原「ダメよ、お姉さんはここに居て」
雪「でも銃声が……」
灰原「状況が分からないまま行くのは危険よ」
確かに状況が分からないのに向かうのは危険だ、それは分かっている。でもコナン君や皆が危険な目に遭うかも知れないと考えると足は店の方へと向かった。
蘭「私が行くよ、雪は哀ちゃんと待ってて」
落ち着いたら来て、と言い私は待つ様に言われてしまった。私は駆け足で店内に向かう蘭ちゃんの背中を見送る事しか出来なかった。
雪「……待つ事しか出来ないのかな」
蘭ちゃんは強い、空手をしているし普通に運動神経もいい。私も運動神経は良い方だが戦闘においては何も出来ない、弓があれば多少は闘えるかも知れないがきっと弱いだろう。
雪「私も空手、始めようかな……」
灰原「しなくて良いと思う」
雪「帰りを待つだけなんて寂しいよ」
灰原「だから空手って……」
落ち込む私に哀ちゃんは少し呆れながらため息を吐く。
灰原「雪お姉さんは強い人よ、こんな状況なのに誰かの事を心配出来て周りにも優しく出来る人なんて少ないもの」
だから強い人よ、と言ってくれた。待つ事も強さなのかと半分納得しつつ店へと視線を向ける。
雪「今は待つ、けど……本当にヤバそうな時は行くから」
灰原「構わないわ、私もずっとはお断り」
店内がどうなっているかは外からでは見えず不安と心配でいっぱいだが今は待つ事に決めた。今考えると全員で参戦して全滅しては元も子もない事に気付く。
雪(全滅だけは避けなくちゃいけない)
もしかして蘭ちゃんはそれに気付いて待つように言ったのかと考える。命掛けのゲーム、行動一つで簡単にゲームオーバーになってしまう世界。
雪(私にも何か出来る事があるはず……だよね)
そう思いながら私達は暫くの間、外で待機していた。