第10章 ベイカー街の亡霊〜ホームズが居なくても〜
ーー貴方side
蘭ちゃんと小さく笑う私達に少し不満げなコナン君。そんなやり取りをしていると元太君が拳銃を見つけて喜んでいた。
元太「うひょー、本物の銃だぜ!」
コナン「戻すんだ元太」
元太「でもよ……あ、雪姉ちゃんなら使えんじゃねえか?」
雪「わ、私?」
弓道をしてるなら拳銃も使えるんじゃないかと元太君に言われたが私は使えないと断った。
雪「使い慣れてない物は危ないし、争いの元になるから置いていこう」
拳銃を使わない事と危険性を優しく伝えると元太君は大人しく拳銃を机の中に戻した。部屋を出る際、コナン君は資料の写真を一枚ポケットへとしまう。
この時、諸星君が拳銃をこそっそりと持った事を知っているのは滝沢君ただ1人だけだった。
トランプクラブに向かう途中、時計の針を確認する。そろそろ私達からも脱落者が出る頃だろう、そう思いながら目的地へと向かった。
ーー松田side
プシュー
ウィーン、ガシャン!
会場では子供達の叫び声と地面に消えていくコクーン、そして悲しみに包まれた人々で溢れかえっていた。
コナン『じゃあ僕は様子を見てくるね』
雪『気を付けてね』
トランプクラブに着いたらしい雪達の声が聞こえる。最初は聞き取りづらかったがコクーンが1つずつ沈んでいく度にハッキリと聞こえて来る。
萩原「雪ちゃんの声聞いたら俺、少しは震えが止まるかなって思ったけど」
松田「……」
萩原「全然ダメだわ……」
鮮明に聞こえ始めた雪の声、それは逆効果だった。
プルルル……
松田「……わりぃ、ちょっと出てくる」
こんな時に電話が掛かり俺は人気の無い場所を探し電話に出た。着信先は桜井、諸伏からだった。
松田「なんだよ、急に」
諸伏「雪は無事?!」
何処で情報を得たのかは知らないが俺達の状況を知っている様子だ。まぁ、公安の人間だったらこれくらい知るのは簡単なのだろう。
松田「雪は無事だが状況は最悪って感じだ」
諸伏「……今からそっちに向かうよ」
松田「……おう、早く来いよ待ってるから」
雪が心配なのが電話越しでも伝わってくる。諸伏は雪の事を大切に想っている。普段だったら来るなと言って追い払うが今はそんな事を言わない、言える訳がない。
松田(俺も同じ立場だったら、少しでも近くに居たいからな)
電話を切った俺は急いで萩原達の元へと戻った。