第7章 眠り姫に願いを込めて
ーー貴方side
雪「夢だったんだ……」
隼斗「俺が此処にいる訳ないだろ」
雪「そう……だよね、お兄ちゃんはもう……」
兄は爆弾事件で亡くなったんだ。でも今は夢の中、もう少しお兄ちゃんといたい。
雪「……」
隼斗「覚めたくないって無しだぞ、お前は覚めないといけない」
雪「っ‼︎」
見透かしたように言う兄の目は真剣で何処か寂しそうでもあった。
雪「夢なんでしょ? ならまだ覚めたくないよ……」
久々の再会、それが夢だとしても私にとって嬉しい事。
隼斗「いい加減にしろ、これは夢だ。待ってる人達のために早く起きろ」
冷たく言い放たれ起きるように言われる。分かってはいる、きっと陣平さん達やコナン君達が心配しているだろうと。
隼斗「俺はお前には幸せになって欲しい、でも此処じゃ幸せにはなれない。……俺はお前の作った夢の中の存在だから」
優しい声で私に語りかける兄に私は静かに涙を零した。
隼斗「泣くなよ、墓いけば会えるんだし」
雪「……夢の中じゃないの?」
隼斗「墓でいい、夢だと覚めない可能性あるだろ」
雪「うっ……」
涙を拭ってくれた兄は笑顔で私を抱きしめた。
隼斗「あいつらに護って、幸せにして貰えよ」
雪「うん……夢でも会えて嬉しかった」
隼斗「俺もだ。まあ、夢の後半にだけどな」
そう言って私から離れた兄。すると私の周りが真っ白に光る。
隼斗「お別れた、またな」
雪「うん……ありがとう」
隼斗「あいつらに、よろしくな!」
そうして私は夢から覚めた。
目が覚めると見知らぬ天井、少し体を起こし辺りを見渡す。夕陽が差し込む部屋は病室、爆発で負傷した私は病院に運ばれたのだと理解した。
雪「……事件はどうなったのかな」
時刻は夕方、夢の中では数日経っていたが現実ではどの程度なのだろう。日にちが分かる物が手元に無いため分からない。
ガラッ
?「……目が、覚めたんだね」
病室の扉が開き誰かが入ってきた。夕陽が反射して誰が来たのかと思ったが声ですぐに分かった。
雪「はい……おはようございます、ヒロさん」
今の病室は2人しかいない、きっと名前で呼んでも構わないだろう。そう思い名前で呼ぶと彼は私に近付きそっと抱きしめてきた。
桜井(諸)「……良かった、起きてくれて」
雪「私、そんなに寝てました?」