第32章 魔女の棲むお菓子の家〜プロローグ〜
ーー諸伏side
雪「わぁ〜本当にお菓子の家だ!」
桜井「本当に童話の中みたいだ」
俺と雪は今、お菓子の家フェアーというイベントに来ている。入場料500円で有名なお菓子を半額で食べられるというフェアーだ。
雪「早く行きましょう!」
桜井「慌てなくてもお菓子は逃げないよ?」
クスクスと笑いながら前を歩く雪を追いかける。このイベントに彼女が行きたいという事は知っていたので連れてきた。諸伏ではなく桜井として。
雪「エクリールはどこらだろ?」
桜井「エクリールって?」
エクリールとはお菓子の鉄人という番組に出ている3人組の洋菓子店。このお店のケーキを食べてみたいと彼女は話した。
雪「ポアロでも美味しいケーキを提供したいので」
桜井「今でも雪のケーキは美味しいよ」
雪「まだまだですよ。……あっ、ありましたよ!」
美味しいと褒めたが雪はまだまぁと小さく笑うと、目的のお店を見つけたのか小走りでお店へと向かう。焼き上がったケーキにクリームを塗りつつ、タルトやクッキーを同時に作っていた。
桜井「見事だな」
雪「この人は、戦うパティシエと呼ばれている前田剛さん。因みに……」
そう言ってエクリールの残りの2人を教えてくれた。俺達の少し離れた所で女性に黄色い歓声を浴びている男性は、お菓子の貴公子の藤野恭男。もう1人はギャンディ・マジシャンと呼ばれている森本友美。
桜井「雪のお目当ては前田さんって人なのか」
雪「美味しい物を提供したいですし、甘い物好きとして一度は食べてみたいケーキです!」
お菓子作りを真剣に見ながら言う彼女に勉強熱心だなと感心してしまう。俺も料理は出来るがケーキ等は雪の方が美味しく作レルので今後が楽しみだ。
雪「さあ桜井さん、食べていきますよ♪」
桜井「そうだね」
雪「まずはケーキから♪」
トレイを渡され幾つかケーキを取りに行く。途中、見覚えのある顔があった気がしたが雪に呼ばれてしまい確認する事は出来なかった。