第133章 むかえに。
「だからといってもう一度その“夏目めぐみ”をこちらの世界に呼び寄せるのは何のメリットもない。」
「メリット…。」
そんなものクソ喰らえだ。と、いってやりたい気持ちをぐっと抑え、降谷は必死に上司を説き伏せようと説明を繰り返した。
しかし上司は首を縦には降らなかった。
「むしろキミがいって身体に支障をきたしたらどうする。無事にまたこちらに帰って来れるという保証はないのだろう。」
「それならば尚更行くべきです。こちらの犯罪者のせいで彼女が本当に向こうで無事なのか確認が必要です。」
「うーん。」
もう1週間毎日こう言って要望をしていても、『めぐみは元々向こうの世界の人間だから』
『ふたたびこちらの世界に呼ぶ必要はない。』
の一点張りで許可が降りない。
それは降谷もわかっていた。
これはただの降谷の個人的な願いだった。
ーー…もう一度めぐみに会いたい。
「彼女がこちらで生きていけるよう戸籍の準備もしましたし、何の問題もありません!」
「…降谷。」
低い声が開い部屋に響いた。
「黒田管理官…。」
「彼女が必要なのはお前だろう。」
「…っ。」
眼鏡の向こうからジロリと見られ、降谷は視線を逸らした。
「お前が最初恋人が出来たと報告してきた時『割り切れ』といったはずだったが。」
「…。」
黒田がそう言うと、横のもう一人の上司が呆れた声をあげた。
「なんだ!あの異世界の女性と恋仲だったのか!だからそんなに必死になってるんだな。なら、なおさら許可は出せない。」
「…くっ。」
「それなら警察を辞めてもらわないといけなくなる。ゼロを。君にはそんな事は出来ないだろう。」
降谷の性格を知っているからか、上司の一人がそう言うと、降谷はポツリと上司を睨みつけながらつぶやいた。
「辞めますよ。」
「…降谷。」
「約束したんですよ。どこにいても迎えに行くと。仲間に同期に友人に部下にーー…。亡くなった彼らの思いを彼女と受け継ぐ。そう決めたんです。…それが出来ないのなら、僕は警察を…」
「降谷っ!」
黒田管理官が声を荒げた。
降谷を睨みつけている。