第133章 むかえに。
「頭を冷やせ。」
「……。」
降谷はしばらくじっと考え、懐から警察手帳と手錠、拳銃を取り出し机のうえに置くと、軽く頭を下げてから部屋から出て行った。
部屋を出て、警察庁の自分の机の上で頭を抱えていた。部屋には誰もいない。
わかってる。
辞めることができないことも。辞める気がないことも。
自分は今バーボンとして潜入中の身であり、安室透としてのポアロのこともある。
でもそれ以上に彼女を諦めることなどできなかった。
もし、向こうで死亡届が出され、また生きづらくなっていたら。
5年の歳月が流れ、向こうで一人生きていけるのか。
こちらの世界でも一人、反社の組に所属してでも生きようとした彼女だ。向こうでもきっとどうにかしていると分かっていても、降谷はめぐみが心配で仕方がなかった。
「…会いたい。…どうしたら。」
やっぱりいっそのこと警察を辞め、薬だけをどうにかくすねてしまおうかと思っていると、ドアがノックもなく開けられた。
立っていたのは黒田管理官だった。
「辞められないことくらいわかってるだろう。」
「…はい。」
「責任感の強いお前のことだ。その気もないんだろう?」
「…。」
「何のために警察になった。好きな女のためか。」
「…自分は……。別にそんな大それた力が欲しかったわけではありません。」
黒田は降谷が先程置いてきた、警察手帳とかを降谷に向かって放り投げた。
「FBIから再び協力要請だ。」
「…え?」
「重要参考人として、“夏目めぐみ”から話を聞く必要があるそうだ。可能なら連れてきて欲しいと。」
「…っ!?」
降谷は勢いよく立ち上がり、黒田を見つめた。
「FBIは薬を飲むのが怖いから日本警察に頼みたいと。そのかわり指名手配になっていた容疑者の数人の手柄を日本警察に譲るといってくれた。そんな子供みたいな要請聞いたことがない。」
「…そんな。」
「FBIに感謝するんだな。」
「はいっ!」
「必ず帰ってこい。」
「はいっ!」
「…ゼロが仕事に打ち込めるなら、彼女は必要なのかもしれないな。」
「えぇ、自分には彼女無しにいけそうにありません。」
黒田はふっと笑い、部屋から出て行った。