第131章 最終章【コーヒーはミルクだけ】
薬はずっと隠し持ってた。
風見さんが誘拐された時、コナンくんと一緒に国際指名手配されていた男の持ち物から一袋くすねてそれを哀ちゃんに渡した。
その時からコナンくんにも内緒にして一粒だけずっと小さな袋に入れて隠し持っていた。
帰るつもりなんてなかったけれど、なんとなく。
持っていた方がいいような気がして。
「はぁーーー。」
寒い冬の空に向かって息を吐いた。
元々いた世界に帰ってきてもう2ヶ月くらいだ。
降谷さんの言っていた通り、こっちの世界に帰ってきても、漫画の通り進んでいるもう一人の私がいるわけでもなく、私に恋人がいるわけでもなかった。
5年前わたしがいなくなった場所と同じ路地裏に、ぱっと現れてうる覚えの自分の部屋に行ってみると当時のままの私の部屋が残ったままだった。
家賃とかどうなってたんだろう…とかいう疑問はあるが、今別に問題なく住めているから、漫画の世界だから…?というよくわからない理由をつけて自分を無理矢理納得させた。
5年も音信不通だったのに、もちろん自分の家族は心配なんてしてないだろうし、私も特に帰ってきたという連絡も入れていない。
「降谷さん、無事に過ごしてるかなー。」
あの時の銃はこっちの世界に一緒に持ってきたから、撃たれてはいないはずだ。
ローラさんが無事かどうかも気になるし、香山さんだって、風見さんだって…。
みんなに何も言わずにさよならをしてきてしまった。
向こうの世界の5年間は隠れて過ごしていて、友人らしい友人もいなくて、ほとんど寂しく過ごしていた。
だけど、ポアロで働くようになって、梓さんと知り合いマスターによくしてもらい……安室さんと出会った。
「ふふ、あの人と出会ってからは怒涛の日々だった気がする。」
バイクで連れ回して、武器密輸組織のボスと会合して、キャバ嬢になって……浴衣で花火見たり、温泉一緒に入ったり、そして恋人になったり。
「ーーー楽しかったなぁ。」