第130章 そんなの知らないっ!
私は手の震えが止まらなかった。
ドアを急に開けてきたらどうしよう。
もしかしたら下のエントランスで武器を持って待ち構えてるかもしれない。
ブーブー
電話がなったので私は急いで電話に出た。
「下まで来た。出られるか?」
「はい。いつでも。」
「そこで待ってろ。」
「はい。」
「電話は切らないように。」
「はい。」
車の降りる音と、早足の足音が電話から聞こえてくる。
ガチャガチャっと鍵の開く音がして、ラフな動きやすい格好の降谷さんがドアを開けた。
額には汗が見える。
急いで来てくれたようだった。
「めぐみっ。」
「降谷さんっ。」
玄関で力一杯抱きしめられた。
降谷さんは被っていたニット帽を外し、私の頭に被せると手を引いて玄関を出た。
「無事でよかった。僕のほうが早かったようだ。すぐここを離れる。」
歪んだニット帽を片手で直しながら私は駆け足で降谷さんについて行った。
階段を駆け下り、マンションの横に停められた白いRX-7に私たちは乗り込んだ。
「…なんで、バレたのかな…。」
どこに向かってるのか私にはわからなかったけど、いつもより速い白いナナちゃんの中で、私はポツリと呟いた。
「わからない。…めぐみ。直前に誰かからか連絡、もしくは、家に来たか?」
「…前田さんが。」
「あの女性捜査官か。」
「でも、風見さんに報告もするって言ってたし、買ってきてくれたものも普通のものでした。」
「…裏切ったとは思いたくないが…風見に伝えておく。」
前田さんが…?
何のために公安を裏切ると言うんだろうか。
「…バレてるな。」
「え?」
「後ろに車が何台か付いてきてる。飛ばすぞ。捕まれ。」
「…えっ!?ーーわっ!」
ぐんっと、身体が座席に押しつけられた。
凄いスピードだ…!
私はシートベルトをぎゅっと握りしめて、横にいる降谷さんを覗き見た。
降谷さんはハンドルを握り、左手でギアを切り替えたまにバックミラーを睨みつけていた。
まさか、この車でカーチェイスを体験するとは思いもよらなかった。