第130章 そんなの知らないっ!
その日の夜、降谷さんがいつ帰ってきてもいいように鍋を作ろうと野菜をたくさん切っていた。
全部片付いたらこの世界に普通に暮らせるんだと、言われたのは本当に嬉しくて、鼻歌を歌いながら料理をしていた。
「降谷さん料理うまいからなー。勉強しないと。」
彼よりうまくなんてことはすぐには難しくても、仕事の合間に帰ってきて身体を休められるよう私も成長しないとね。
「…ずっと一緒にーー、か。それって。」
プロポーズみたいって思ったけれど、違うかもしれないし、自惚れないようにって頭ではわかっててもつい顔がにやけてしまう。
「私も早く好きって言いたい…。」
勇気がなくて、恋人になりたいとは言ってもまだ気持ちを言葉にして伝えれてない。
「全部終わって、いいタイミングで言わなきゃね。」
そう言いながら、私は野菜を鍋に入れて行った。
その時だった、携帯が鳴ったのは。
「降谷さんからだ。ーーーはい。」
電話に出ると、降谷さんは真剣な声だった。
「めぐみ。その場所がバレた。」
「…えっ。」
「雇われた組織がそのマンションに向かってると情報が入った。すぐにそこを脱出する。荷物も全部そのままでいい。すぐに出られる準備を。」
「はい。」
「僕が行くまで絶対にその部屋から出ないように。また連絡する。」
「はいっ!」
私は急いで鍋の火を消し、携帯をポケットに入れ、髪の毛を結んだ。
外は冷えるだろうと風見さんが買ってきてくれた上着を羽織り、指輪を確認。
「…なんで……バレたんだろう。」
外には出なかったし、配達のあるネットショッピングだって我慢した。
だれが会話を聞いてるかわからないから梓さんたちとも電話もせず、全てをシャットダウンしていたのにーー…。
ポケットの中身を確認して、部屋を出られるかどうかも確認した。
もしかしたら外にいるかもしれないと、場所が特定されないよう電気を消すこともやめておいた。
「…怖いよ。降谷さんーー…。」