第127章 ぬくもり
「コナンくんが…?」
トントンときゅうりの輪切りをつくっていた降谷さんが、一度ぴたりと止まり、ダン。ダン。と包丁を下ろし始めた。
「う、うん。降谷さんとその…別れてた時、寂しくてぽろっと…。」
「…ぽろっと?ぽろっと言うようなことか?」
少し太めのきゅうりの輪切りが出来ていく。
「あの…えっとーー…、」
なんて言ったらいいのかわからない。
包丁を手にした降谷さんは私の横でじっと私を見下ろして私の言葉を待っている。
「だってさ!降谷さんだってさ!急にぽろっと『私とはもう会えない。』とか言ってきたじゃん!だから泣きながらコナンくんに相談したの!その時に私のことも話したの!」
ちょっと降谷さんに責任転嫁しながら言うと、少し寂しそうに、「そうか。」と一言だけ返事をした。
そりゃあ、降谷さんのことを世界で1番信頼してる人って降谷さんに言ってたくせに。その降谷さんには言わず、コナンくんに言ったのは、たしかに降谷さんにとって面白くないかもしれないけど…。
「たしかにあの少年には何か相談したくなる気持ちはわかる。」
トントンと再び優しい包丁遣いで、きゅうりを切りながら降谷さんはにっこりと笑った。
ちょっと怖いにっこりだ。
「こんな大きな秘密もちろん僕とコナンくんくらいしか知らないよな?」
「…。」
「めぐみ?どうした?黙って。…これからの捜査に関わる可能性がある。めぐみが異世界から来たかもしれないと、他に誰が知ってる?…まさか…なぁ?」
あの…きゅうり切る時は手元見てください。
と思いながら、小さな声で私は言った。
「…赤井…さんが…知って……ます。」
ダァンと大きな音を立てて包丁が下され、残り2センチくらいのきゅうりがシンクに向かって飛んでいった。
「…。」
「…。」
髪の毛で降谷さんの表情が見えない。
ーー怖い。
降谷さんは包丁をまな板の上に置くと、私の手首を掴み、ぐいぐいと強く引っ張り歩き出した。
「降谷さんっ。」
「抱く。」
「へっ!?なんでっ!」
「うるさい。なんか腹が立つ。」
私の寝室を開けると、そのまま手首を強く引き、私をふわふわな布団に放り投げた。
「きゃっ。」
「抱き潰す。」
「…っ!」
私が逃げれないよう、降谷さんは膝を私の足の間にいれ、のっそりと覆い被さってきた。