第12章 おかえり
カランカランと三回目の来客を知らせる音がして、私はオモテに出ようと立ち上がった。
「めぐみさん、大丈夫ですよ。まだ僕だけで回せます。」
「売り上げ入力も発注も終わったし、新しいメニューのチラシも作り終わったらから私も大丈夫ですよ。」
「さすがですね。」
「安室さんこそ。」
話しながらも手際よくモーニングを作っていく安室さん。
「じゃあ、めぐみさんはアイスカフェラテお願いしていいですか?」
「はい。」
お盆に乗せ、安室さんはお客さんに配膳をしている間に私は言われた通りカフェラテを作り始めた。
お水がなくなった人の席におかわりを持って行き、食べ終わった人の食器を下げる。
その食器をバックヤードで洗う。
人当たりのいい安室さんにはメニューを聞きに行って、コーヒー持っていってもらって、世間話でお客さんを楽しませてもらって…。
朝の一番忙しい時間が過ぎていった。
「めぐみさんのおかげで、スムーズに進みました。ありがとうございます。」
「いえいえ、これが私の仕事だから…安室さんもさすがでした。相手を楽しませる話術すごいなぁ。私は苦手だ。」
「そうですか?僕はめぐみさんと話すの楽しいですよ?」
「…ほら。それ、褒めるのとか私恥ずかしくて言えないです。」
「ふふっ。」
ふふって。本当にタラシだなぁ。
これで彼女いないとか不思議だ。
「少しはやいですけど、お昼にしますか。朝早かったですですし。」
私がそう提案すると安室さんも頷いた。
「何か余りそうな食材で適当にパスタでも作りましょうか。」
適当な食材でパパッと作るってやつですか。
この人に弱点はないのか。
カウンター下の冷蔵庫を開け、何を作ろうか考えている安室さん。
髪の毛…キラキラして綺麗だな。
私は目の前の髪の毛に手を伸ばした。
「ん?どうしました?」
「あっ…ごめんなさい。…つい。」
「つい?」
「え…あっ」
「そういえば、買い出しに行った時は逆でしたね。」
安室さんは下からにっこり微笑みながら私を見上げた。
「あの時は僕がついめぐみさんの髪の毛に触れてしまいました。」
「…そうだったんですね。」