第12章 おかえり
安室さんが手を止め、わたしへと向きを変えた。
「怪我の心配、身体の心配、忙しい僕への労いの言葉。」
「それは…バイト仲間として普通ですよ。」
「いいえ。」
「わずらわしかったですかね…ごめんなさい、無意識です。」
「わずらわしいだなんて。逆ですよ。無意識だからこそ、すっと僕の心に入ってきた。」
安室さんはわたしの頬に手を伸ばしてきた。
すごく優しい顔だ。
「貴女の横は居心地がいい…以前そう言いましたよね。」
…そうだったかな。
あまり覚えていない。
わたしは今ドキドキしすぎて、居心地が悪いですっ。
どうにかしてここから逃げ出したい。
「めぐみさん…」
一歩。また近付いてきた安室さん。
彼の顔が見れなくてわたしは視線を下に向けた。
「あっ…あの…開店準備…」
「…ふぅ、そうですね。」
安室さんはため息をついて私の頬から手を離した。
その隙に私は安室さんに距離をとり、バックヤードに走るように逃げた。
イケメンは私には刺激が強すぎるっ!
居心地がいいって、なんだろうか。
そんなのいつも怪我して血を出してってなってたら心配するのは当たり前じゃないか。
蘭ちゃんだって新一くんのこといつも心配してるし、コナンくんのことだって…
安室さんだって、きっとそんな風に気にかけてくれる人はたくさんいるはず。
たまたまバイトでよく会うから私がわかりやすいだけだよ…きっと。
もやもやと考えを巡らせながら私は無駄にカチカチとマウスを動かした。
オモテではモーニングを食べにきたお客さんの来店を知らせるドアの鐘が鳴ったところだった。