第120章 園子さま
「疲れたなら、休ませてーって言えばいいのに。ごめんとか言ってないで。」
呆れたようため息をついて安室さんの頭をわしゃっとしてやった。
「いや、めぐみさんを後回しにしてる自覚はあるから、申し訳ない気持ちは本当にあるよ。」
「うん、でも、私は大丈夫だから。ありがとう、気にかけてくれて。ほら、休もう。」
私は安室さんの横に座って、膝をポンっと叩いた。
少し不本意だと言うような表情を一瞬だけ浮かべた安室さんは、困ったように眉を寄せ大人しく私の膝に頭を預けた。
「カッコ悪いな。」
「何が?」
「ーー…いや。なんでもない。あー落ち着く。」
「変な安室さん。」
自分の手の甲をおでこに置き、安室さんはふっと力を抜いた。
さわさわと撫でる髪の毛。なんだか膝枕も久しぶりだなぁ。
「…そう言えばお店。」
「今梓さんが締めの作業してるよ。」
「……見られるんじゃない?」
「もう、いいよ。見られても。今トイレ掃除してたからもう少しかかると思うし。梓さんならそんなに騒がないよ。」
…たぶん。
「じゃあ、梓さんが来そうになったら起こして。」
「うん、たった15分だけくらいかもだけど、ゆっくりして。」
優しく微笑みかけると、安室さんはそっと瞼を閉じた。
深い眠りなんて、もちろんこんなところでつけないだろうけれど、たった15分でもいいから、心から落ち着けますように。
そう願いを込めて、頭を撫でた。
別に二人でデートなんてできなくったって、一人ポツンと残されたって構わない。
この時間が少しでもあれば、私には充分なのだ。
カタリと音がして、掃除用具を持った梓さんがバックヤードに入ってこようとしたので、私は人差し指をそっと口元に持って行った。
私たちの様子に気付いた梓さんは、目をパチクリとさせ顔を赤くすると、何度も私に向かって頷き、お店の方に戻って行った。
他の作業にしててくれるんだろう。
気を使わせちゃったけど…もう少しーー。
もう少しだけ。