第118章 右腕
「上司の愚痴はいつでも聞きますよ。」
「それはいいですね。バレないようにお願いします。」
「おい、聞こえてるって。」
私はふふって笑うと、降谷さんの後ろに下がった。
「お仕事のお話でしょう?私廊下にいるね。」
「悪い。」
「さっき通った廊下の自動販売機行ってくる。風見さんはブラックですか?」
「すみません、ありがとうございます。」
「めぐみ。」
「ん?」
「盗聴器は仕掛けてないな?」
「も、もちろん!あの一度だけでございます!」
私はじとっと見てくる降谷さんから目を逸らし、急いで病室を出た。
事件についてきっと大事な話をするだろう。
風見さんが指名手配犯となにか会話をしていたのなら、その内容がとっても気になるところだが、牽制された今、盗聴器をつけるのは不可能だ。
聞き耳立てる…?
いや、やめておこう。
絶対バレる。
私は観念して、素直に自動販売機に向かった。
今買ったところで、まだ部屋には入れないだろう、と思って私は自動販売機の前のベンチに座り、ぼーっと時間を潰していた。
すると奥から聞こえてくるヒールの音。
ーー…もう、見なくても誰かわかる。
いつも、こういったタイミングでやってくるんだ。あの人は。
「あら、おはようございます。めぐみさん。」
「…おはよーございます。」
ベンチに座ったまま、膝に肘を置き、ちらっとローラさんに視線を向けた。
「貴方は本当にどこにでも現れますね。」
「はは。」
あなたもね。と、心の中で呟いた。
ローラさんは大きなカバンを持っていたので、風見さんの入院のための荷物を持ってきたのだろう。
黙ってれば仕事はできる人なんだろうけど……。
「昨日、降谷さんは遅くまで仕事をしてましたよ。貴方や貴方のお仲間さんがいてくれたおかげで、報告書が複雑になりましたから。」
「…。」
「まったくあんなチャラい方々の前に公安が出て行くなんて…。」
「貴方はお仕事出来る方だと思ってましたが、そうじゃないみたいで残念です。」
「…。」
「私だけへの嫌味やらマウントでしたらいくらでも聞きますが、あいつらを悪くいうようでしたら笑って受け流しませんよ?」