第118章 右腕
部屋に入ると、頭に包帯を巻き、顔にはガーゼ、右腕をギプスで固定されて、ぼろぼろの風見さんがベッドに座っていた。
「風見さんっ!」
あまりのぼろぼろ具合に驚いて、私はベッドに駆け寄った。
「めぐみさん。…降谷さんも。」
「大丈夫…な訳ないですよね。」
「大丈夫です。生きているので。」
「…!」
そんな言い方…。本当に危ない状況だったんだ。
「めぐみさん。あんな電話をいきなりすみませんでした。」
ふるふると頭を強く振った。
「めぐみさんのおかげで助かりました。降谷さんに伝えてくださったんですよね。機転を効かせて同じように演技をしてくれて…」
「私は…特にそんな特別なことは…。本当に伝えただけで、場所の特定とかも、全部降谷さんがしたし…」
そういうと降谷さんが私の頭をガシガシと撫で回した。
「あの録音がなければ特定はできなかった。風見。めぐみは君との会話を録音してくれてたんだ。」
「そうだったんですね。命の恩人です。」
私は溢れそうな涙を必死に我慢した。
「よかったです。風見さんが無事で。」
「ありがとうございます。…ところで、お二人は元に戻ったんですね。」
左手でメガネをくいっとあげて風見さんは降谷さんに言った。
「…風見には何かを言った覚えはないんだが。」
「何をおっしゃいますか。あれだけ態度に出てて。」
「…僕の特技はポーカーフェイスだ。」
「今は幸せで仕方ないって顔をされてますが。」
「……。」
「ふっ。」
すこし困った表情の降谷さんを見て、私は吹き出してしまった。
「めぐみさん。」
「はい。」
風見さんは真剣な顔でベッドから私を見上げてきた。
「うちの上司をこれからもよろしくお願いします。」
「…風見、君な。」
「はい。任されました。」
私は笑って頷いた。
「ちょっと向こう見ずなところもありますし、」
「そうですねー。もう周りも見えなくなっちゃって。」
「確かに。自分を犠牲にしてでも突き進む人ですから。」
「うんうん。それを制御するのも大変ですね、風見さん。」
「これからも2人で頑張りましょう。」
「そうですね。2人で支えましょう。」
2人で頷き合い、風見さんの左手を強く握りしめた。
「おい、僕を無視するな。」