第11章 傷
この傷?この小さな傷?
確かに今日どこかで切ったのだろうけど、
自分で絆創膏貼れば良くない?ってくらいの傷だった。
まぁ、いいか。
「どうしたんですか?この傷。」
絆創膏を安室さんの右手の人差し指に貼ってあげながら聞くと、安室さんはゴソゴソと左手で上着のポケットに手を入れた。
「コップを持っていたら割れちゃったんですよ。」
「は?勝手に?」
「いえ、ちょっと力が入ってしまって。」
え、握りつぶしたってこと?
ガラスコップを?
「これ。なんです?」
左手で取り出したスマホの画面を私に見せてきた。
そこには黒髪の好青年と笑いながら踊っている私が写っていた。
「…?昨日鈴木財閥のパーティーに呼ばれて行ってきたんです。」
それがどうかしたのだろうか。
正直にそう答えると、安室さんは絆創膏を貼り終わった右手で私の手を掴んだ。
「彼は?」
「全然知らない人…ですけど。ダンスパーティーでしたので、何人かと踊りました。そのうちの1人です。みんなそんな感じでしたよ?」
安室さんも行きたかったのだろうか。
いつも忙しい人だもんね。たまには安室さんだって遊びたいのかもしれない。
「ほー。いつもダサいメガネにダサい髪形のくせに、昨日は偉く綺麗にされたんですね。」
「オブラート包もう?」
もう、ダサいって当たり前に言うようになったよね。
「僕が最初に気付いたのに。」
「え?」
「貴女が何故か地味にダサく過ごそうとしているのは気付いてましたよ。いつか僕のために美しくしてやろうと思っていたのに。」
「…何言ってるんですか?」
ぎゅっと力いっぱい手を握り締められ痛くて顔をしかめた。
「あ、安室さん、痛いです」
「あぁ、すみません。さっきも写真見てこれでコップ割ってしまったんですよ。」
握力すごすぎない?
握る力を緩めた安室さんは今度は私の手首を持ってぐいっと引き寄せた。
危うく安室さんの上に乗ってしまいそうなったが、ソファの背もたれに片手をつき、膝をソファに立てたためそれは阻止した。
しかし、まるで安室さんに私から迫ってるみたいだ。
腰に手を回し、もう片方の手はまた私のメガネを取ろうとしている。
「このメガネを取るのは僕だけでいい。」