第117章 家にて
マグカップを握りしめ、たまにコーヒーを飲む。
しばらくの沈黙の後、降谷さんがコーヒーを持つ私の手に触れて来た。
「めぐみが僕を庇ったとき、目の前が真っ白になったんだ。バーボンという事を忘れ、キャサリンを責めていた。潜入捜査官としてはあるまじき行動だった。」
「…。」
「その後、話した通り僕の同期の奴らが死んでいったことを思い出した。」
「うん。」
「本当にツラかったーー…。あいつらが死んでいくたび、僕のすべきことを考えた。立ち直るのにも時間がかかった。」
ぎゅっと、私の指先を握りしめる力が強くなった。
「次は耐えられない、めぐみがもし僕の大切な恋人になって、同じようにいなくなってしまったら…、僕はきっと前に進めなくなるって思ったんだ。」
「…うん。」
「だから僕のわがままでこれ以上一緒にいちゃダメだと君を遠ざけた。僕にはどうしても成し遂げたいことがあったから。それが死んでいったあいつらにできる事だと思ったから。だけどーー…」
降谷さんは手を私の手から離し、私の頬に触れた。
「もう、君は僕にとってそれ以上の存在になってたんだ、めぐみ。」
「…。」
見つめられ、私も目を逸らせなかった。
「めぐみ、君がいないと進めない。失いたくないんだ。…僕にとって帰りたい場所は君がいるところだ。」
「降谷…さん。」
ポロポロと涙が落ちる。
頬をつたい、降谷さんは手のひらでそれを拭ってくれた。
「めぐみ。好きだよ。僕の帰る場所になってくれないか。」