第11章 傷
「楽しそうだね。じゃあ、僕は上がるから後はお願いね。」
マスターはエプロンを外しながらバックヤードに入ってきた。
仕事中だった!って言いながらスマホをしまって梓さんはバタバタとオモテに戻り、私はパソコンの席についた。
昨日の売り上げを入力したりしなくちゃいけない。
それに、もうすぐ月末なのでみんなのお給料の手続きも。
「お疲れ様でした。」
荷物を持って出て行こうとするマスターにそういうと、マスターもにっこりと笑った。
「めぐみちゃんもせっかく綺麗なのにそうやって隠れて暮らさなきゃいけないの大変だね。」
「え…写真、見たんですか!?」
「もったいないなー」
「みんなには隠れなきゃいけないの…」
「大丈夫、言わないよ。みんな色々あるからね。」
また今度、夜よろしくねって言ってマスターは出ていった。
マスターには本当に感謝している。
住むところも働くところも準備してくれて。
彼を紹介してくれたのは組で優しくしてくれた父のような孝臣さん。
…たかおみさん、元気にしているだろうか。
今もきっと、何処か裏の世界で生きてはいるんだろうな。
とりあえず昨日の売り上げの計算と入力が終え、発注を終わらせると私も梓さんのところに向かった。
「梓さん、どう?忙しい?」
「んー、そうでもないよ、そんなことより!昨日のこと聞かせてよ!」
「…あ、梓さん。マスターに写真見せたでしょ!」
「だってめぐみちゃんあまりに綺麗なんだもん!みんなに知らせたくて!」
「…みんな…?マスターだけじゃないの!?」
「マスターと安室さんに送っちゃった。」
見せるどころか送ってた!
隠れて過ごしてるから写真自体を消してって言おうと思ったのに、送ってた!
しかも安室さんにまで。
安室さんだって、私の写真なんて貰っても困るだろうに。
「全部送ったの…?」
「ううん!めぐみちゃんがキスしてるのは送ってないよ!さすがにそれはまずいかなって。」
「だからキスしてないってば…」
カウンター内でわいわいと二人で話していると、ドアの鐘が鳴った。
蘭ちゃんと園子ちゃんである。