第114章 風見裕也の災難
ゴミ箱の後ろに隠されたクラッチバッグを手に取り、ゆっくりとチャックを開けた。
「…薬?」
中には白い錠剤が大量入っていた。
いい薬でないことは確かだろう。
やはり製薬会社と何か関係があるのかもしれない。
ジャリ
後ろから足音がして、振り向いた時には遅かった。
何か棒のようなものが振り下ろされる瞬間だった。
咄嗟に横に避けたが間に合わず、肩を強打してしまった。
痛みでよろけたが、足でぐっと踏みとどまり男を睨みつけた。
さっきの指名手配の男だ。
私は棒を持つ男の手首を蹴り上げると、カバンを持ちそこから走り出した。
仲間がいると判断したからだ。
あのままだと捕まってしまう。そうでなくても殴られた左肩から手が痛みで動かないのに。
複数の足音が聞こえる。
こんな路地裏だ、挟まれたら終わる。
何度か曲がりそれでも走り続けた。
ーー…だめだ。捕まるのも時間の問題だ。
私は薬の入ったカバンと警察手帳、拳銃、手錠などをエアコンの室外機の下に隠し、再び走り出した。
ここから少しでも離れないと。
「ちょこまかと逃げ回りやがって。……風見裕也?」
「…はぁ…はぁ。」
「持ち物は財布と携帯だけか?免許証しか入ってねーじゃねぇか。」
「あぁ…仕事の合間に昼飯を食べに出ただけだ。」
「まさか、警察じゃあ…」
「…サラリーマンだ。」
「カバンを持って行っただろう。どこにやった。」
「急に殴られたから怖くて走って逃げただけだ。カバンはすぐにその辺に置いた。」
「思い出せ。どこだ。」
ガッと棒でこめかみのあたりを殴られた。
「ぐっ…!」
「カバンの場所がわかって見つかるまでお前を返すわけにはいかねぇ。ほら、痛い目に会いたくないだろ?ほらっ!!」
ドゴっと再び肩を殴られ、痛みで声すら出なかった。
「…っ!!はぁ…はぁ…カバンはその辺に投げたんだ…」
「じゃあ、帰れねーな。」
「くぅっ!」