第114章 風見裕也の災難
正直なところ人が消える、というのは信憑性が無かった。
行方不明届も出された様子も何もないからだ。
元々家族も友人もいない、行方不明届を出す人がいない孤立した人間がいれば別だが。
しかし、違法薬物というのはそうだろう。
資料を見る限り、横領した金はすべて薬を作ることに回しているようだったからだ。
「これが新しい資料です。」
「これは…?」
「近くの監視カメラ映像に国際指名手配されている男が出入りしているようでして…。FBIもそのために来日しています。」
FBI…と聞くと赤井さんを思い出すが、これはまた違う事件だ。他の捜査官だろう。
「近くこちらの資料をみたいとFBIが捜査協力を依頼してきています。」
「そうか。じゃあ、この資料をもう少しきれいにまとめて英語に翻訳を頼めるか。」
「はい。」
…FBIか。意外と大きな事件かもしれない。刑事課には手を引かせて公安で全て受け持つか。
一度降谷さんに相談してもいいかもしれない。
ーー…いや。今降谷さんにこれ以上負担をかけさせるわけにはいかない。
もう少し様子を見よう。
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その日は、車で近くを通ってただけだった。
以前降谷さんがおいしいと言っていたカレーのテイクアウトを届けようと、少し離れた街に買いに来ていた。
少しでも降谷さんに精のつくものをと…。
テイクアウト用の容器が倒れないよう助手席に起き、駐車場から出ようと前を見ると、あの男がいた。
ーー先日みた国際指名手配の男だ。
あの製薬会社からはここは離れているはずだが…
男は小さな黒いバッグを脇に挟み、キョロキョロとするとビルの間へと入り路地裏に向かった。
ここで見失うわけにはいかない。
車を降り、目立たぬよう彼に後をつけた。
男は周りを気にしながら、持っていたカバンをゴミ箱の裏に目立たぬよう置くと、足早に去って行った。
…どうする、男を追いかけるか。
それとも、あのカバンを調べるか。
後者を選んだ。
爆発物などの危険物の場合、早く処理しなくてはならないし、取引のブツならここで張ればまた犯人がやってくる可能性があるからだ。
私は男が去ったのを確認してカバンへと近づいた。