第112章 寂しさを
赤井さんの赤い外車のエンジン音が響く。
助手席に座って、外の景色をぼーっと見ていた。
「…ごめんなさい」
「何がだ。」
「…ずるいですよね。私。…こんな時だけ赤井さんを頼って。」
「そんなことない。男女の奪い合い、気持ちの移り変わりなど、いたって普通のことだ。寂しいなら誰かに縋ればいい。…知ってたか?」
「…?」
「初めて会ったパーティーの日。あの時俺は誰でもよかったんだ。」
「…そうなの?」
ふっと、笑いながら夜の山道を適当に走らせる赤井さん。
「恋人を亡くせば、誰だって寂しい。誰かでそれを埋めたいと思うことは別にずるくないさ。」
そうかーー…赤井さんもそういえば恋人を組織に殺されたって。
赤井さんも死んだことにして組織から隠れて暮らして不自由なんだ。
私だけってわけじゃない。
「…なんだか、私たち似てるかもしれませんね。」
「…ふ、そうだな。」
一気に心が軽くなった気がした。
『貴方の代わりはいくらでも。』
ぐるぐる繰り返されるローラさんに言われた言葉。
別に私だけが降谷さんにとっての特別なんかじゃないんだ。
私だけじゃーーない。
赤井さんに涙をまた流してるところを見られたくなくて、私は窓の外を眺め続けた。
赤井さんはそれに気づいているのかわからないけれど、黙って車を走らせてくれた。
見慣れた風景が見えてきて、米花町に戻ってきたんだと分かった。
自然と工藤邸へと向かう赤井さん。
車庫へと車を停めると、助手席のドアを開けてくれた。
ーー…私、ここに入ってもいいのかな。
手を差し伸ばされたが、その手を取ることに躊躇してしまう。
「めぐみ。安心しろ。」
「…?」
「今のお前を抱こうとは思わん。」
「…。」
「今君はもしかしたら寂しさで俺を求めているのかもしれないが、後で傷つくのはめぐみだ。」
「…赤井さん。」
「おいで。今はそばにいるだけでいい。」
私は、赤井さんの手を取り車を降りた。