第110章 誘拐
おにぎりを食べながらコナンくんはじっと考えていたようだ。
食べ終わり、私にハンカチを渡してくれて、しばらく慰めてくれた。
「めぐみさんはそれでいいの?」
「…。」
本当はそばにいたい。
支えたいとか何かあったとき助けてあげたいとか、考えるけど、私にできることは些細なことだ。
それでも、少しでも彼を癒すことが出来るのであればずっと一緒にいたかった。
『無茶せず、怪我なし、頑張って!』
怪我を治してあげて、声をかけて送り出す。
私にできることなんてそれくらいでーー…
『君がいなくなったら、僕はもう立てなくなる。立ち上がる事も、進む事も出来なくなる。次はもうきっと…耐えられない。進むためにはこれしか思いつかないんだ。』
何度もよぎる、降谷さんの言葉。
「そ、そばにいたいけど…、私……わ…たし……」
涙と嗚咽で、言葉が出てこない。
「だめだ…よ。そばにいられない…」
「めぐみさんらしくない。『もし何かあったらってなんだよ、自分の身は自分で守る!』くらい言いそうなのに。」
総長のモノマネだろうか、完成度は低かった。
「その“もし”は本当にあるかもしれないんだもん……」
「何かあって居なくなるかもしれないってこと?」
コナンくんの言葉に私は小さく頷いた。
「…それは、この部屋にも関係ある?この…何もない部屋に。」
コナンくんは床にペタリと座ってまた、部屋を見渡した。
「…いついなくなってもいいようにしてる。」
「それにしても異様すぎる。食器は数個、ゴミ箱もなくビニール袋にそのまま。冷蔵庫はホテルにあるような小さいやつだし。テレビも棚もソファもない…年頃の女性の部屋じゃない。しかもここ。居住用の部屋じゃないよね?床も壁もコンクリートみたいだし。何かの事務所?」
「…テナントを借りた。」
「教えてよ。めぐみさん。なんでいなくなるの?」
「私……たぶんこの世界線の人間じゃないの。」