第107章 知ってる?
「めぐみさん、僕を庇って薬を打たれましたよね?」
「…うん?勝手にやったことだけどね。」
「その対価を払ってもいいですか?」
「えっ!?いい!大丈夫!」
「大丈夫、軽いフレンチキスですよ。」
知ってる!
その笑顔…!絶対フレンチキスがどんなキスか知ってる顔!
「庇ったけど…それ以上にたくさん助けてもらったから!チャラです!貸しもなにもないです!」
両手を振って拒否したが、ガシッと手首を掴まれた。
「払いたいんですよ。貴方に。もしあの時僕がそのままキャサリンに薬を打たれていたら、鬼頭には逃げられてました。だからこれは大きな貸しです。」
「…サンドイッチを作ってくれました。ほら、これで十分だよ。」
「僕からのフレンチキスは嫌ですか?」
「いやってわけじゃ…そういうことじゃなくて。」
ぐっと、掴まれた手首に力が入った。
ころころと転がっていくタイプの椅子の足を転がっていかないように安室さんはぐっと踏んづけた。
もう片方の手は背もたれに置いて、だんだんと近づいてくる。
「あの…いまオモテはいいんですか?お客さん…とか…」
「あぁ、先程、貴方がきた瞬間強風でオープンの札がひっくり返ったみたいです。」
…嘘つけ!
扉にあるオープンとクローズドの札は店内にいつも置いてるはずだ!
「…仕事…溜まってるし…」
「大丈夫。軽いフレンチキス、ですから。」
「んっ…」
下から角度をつけ、ふわっと当てられたキス。
ドキドキする。
その次のキスを目をぎゅっと綴じて、待っていると一向に来る気配がない。
不思議に思ってうっすらと目を開けると、至近距離で安室さんがじっとわたしを見ていた。
「そのキスを待つ顔を赤井にも見せたのか。」
「…?」
「そうやって、フレンチキスを勘違いして受け入れたのか。」
「…っ。」
「……仕事に戻りますね。」
私から視線をそらし、安室さんは私から離れた。