第99章 バーボン【その2】
私は恐怖で首を振り続けた。
本気のハニートラップってどういうことだ。
「普通のでもいうこと聞いちゃいそうです…」
「貴方は頑固そうですが。」
私は横にいるバーボンをチラチラとみた。
…くぅ、カッコいい。
「…なんです。」
「いや、服装が…いつもとまた違って、かっこよくて…」
真っ黒の革靴に真っ黒のズボン。
紺のシャツに白いネクタイ。
闇溶けやすい暗い色の服だ。
「服装が違うのは貴方もでしょう。」
「…そうですけど。」
肩にポンと手を置かれ、バーボンはにっこりと笑った。
「このまま手を引きますと言ってくれますよね?」
「…。」
「それとも、ここで無理矢理言わされたいですか?」
バーボンは私の首にあるレースのチョーカーに指をかけぐっと引き寄せ耳元で囁いた。
「今回はどんな理由があろうと、どんな手を使っても手を引かせるからな。」
「失礼致します、お客様。」
「…はい。」
至近距離で見つめあっていたら、カーテンの向こうから黒服のボーイさんが話しかけてきた。
私たちはすこし距離をとった。
「まもなくラストオーダーのお時間でございます。」
「わかりました。」
要件を言っていなくなった黒服さんを確認すると、バーボンさんは私を見た。
「アフターを。」
「え?」
「キャバクラにはそれがありますよね?ユメさん。」
「え!?私、したことないくて!」
「それはよかったです。では、僕とアフターに行きましょう。」
アフターってアレだよね?
キャバ嬢と閉店後にお客さんと一緒に過ごすことだよね!?
…そんなの絶対………危ない匂いしかしない!
「し、新人はアフター禁止されてて…」
「言わなければれません。」
「そもそもこのお店アフターあったかなー…」
「ありますよ。さっき見ましたから。」
「はじめてのお客さまとは…もうちょっと親しくなってからー…」
「めぐみ。早く荷物を持って店の前に来ること。いいな。」