第99章 バーボン【その2】
ゴクリと唾を飲む。
恐くて振り向けない。
「ユメさん。」
再び肩が揺れる。
「こちらにどうぞ、横座ってください。」
「…っ」
「僕はいまお客さんでユメさんは、キャスト…なのでしょう?」
恐る恐る後ろを振り向くと、足を組んでソファに腰掛け、バーボンがこちらをじっと見ていた。
ゴクリ。
とぼとぼとカタツムリかと思うほどゆっくりのんびり席へと向かい、3人分ぐらい距離をあけて座った。
「遠い。」
「ひっ!」
「ここからだと、外からカーテンの中が見えないからこちらへどうぞ。」
見えないなら行きたくないです。
とは、声に出して言えないので、心で言っておく。
「あの…お水だとアレなので…ノンアルコールで何か…。」
「あぁ、貴方の稼ぎになりますもんね。」
そういう意味で言ったわけではないのだけれど、バーボンもわかった上で皮肉っているのだろう。
水だけだと、何か飲むかと黒服のボーイの人が訪ねてくる可能性があると思ったからだ。
黒服さんにお茶を頼み、私も同じものを頼んだ。
飲み物が届くまで無言の時間が過ぎる。
下手にしゃべって誰かに聞かれたら困るからだろうか。
カーテンの向こうに黒服さんが飲み物を用意してくれたので、私はそれを受け取り、バーボンの前に置いた。
「それで。何か言うことは?」
バーボンの左横で、私はなんと言っていいか分からず、俯いた。
「ダンマリですか?」
「ご、ごめんなさい。」
「謝罪など求めてません。」
「…。」
バーボンはぐっと私には近づきピッタリ寄り添うように座り直した。
「一つ一つ聞きましょうか。」
「…。」
「ここで、何をしてるんです?」
「えと…キャバ嬢。」
ピクリとバーボンの眉が動いた。
「そんなことが聞きたいんじゃありません。」
「ひっ。」
「なんで、ここで、働いて、るんです?」
一言一言ゆっくりと言い聞かせるように私にいうバーボン。
「…梓さんが、困ってて。」
もしバレた場合は正直に話すと梓さんには言ってある。
「何にですか。」
「友人がここのお店からいなくなったみたいで…、梓さんと一緒にって相談されたんだけど…梓さんには危ないと思って…」
「…はぁぁぁぁー。貴方は危なくないと。」
こちらをみて右手で両頬をがしっと掴まれた。
痛い。