第98章 遭遇
深夜1時。
今日は私はあがりだ。
ヒールを脱ぎ、足首ストレッチをする。
着なれないキャバドレスを脱ぎながら、大きなため息をついた。
…疲れた。
初めてジンと話をした。
なんて迫力のある人だろうか。
目だけで人を殺せる。とは、まさにこのことだと痛感した。
「ユメちゃん、今日もVIP席だったんだよね?」
「キャサリンちゃん…そうなんです。」
ロッカーのある控室で話しかけてくれたのはハーフ顔のキャサリンちゃん。私より数週間早く入った先輩で、入った時期が近いからと、いつも私を気にかけてくれていた。
「一人すごい人が入っていってなかった?全身真っ黒の。」
…組織さん、逆に目立ってますけど。
「うん、でもすぐ帰ってたよ。」
「VIP席で指名いつも貰えるってユメちゃんホント新人の中で抜き出てるよね。すごーい。」
「いやいや、指名数は断然キャサリンちゃんのほうが上だよー。私はあのVIPの彼がすごいお金落としてくれるから…。」
ふわふわと笑う可愛いキャサリンちゃんは仕事で疲れた日本の男性陣にかなり支持されている。
「うん…でも、早く辞めたい。」
キャサリンちゃんは、ワンピースを着ながらぽそりとこぼした。
「辞めたいの?なんでこの仕事選んだのか…聞いてもいい?」
「彼氏がね…借金しちゃって。私も手伝いたくて。」
…そんな彼氏別れた方が。
とも思ったけど。今、もし降谷さんに500万仕事で必要だから少し手伝ってって言われたら私もほいほい出しそうな気がする。
いや、降谷さんはそんなこと絶対言わないか。
「でもね、前に来たお客さんで他の仕事紹介してくれるって、親切な人がいて、今度話を聞こうと思ってるの。」
ふわふわっとウェーブかかった髪の毛を手で直しながら、キャサリンちゃんは嬉しそうにそう言った。
これだ。絶対彼女はいま狙われている。
私はロッカーを閉じ、キャサリンちゃんに近づいた。
「ねぇ、私もその話すごく興味ある。今度一緒に席ついてもいい?」