第98章 遭遇
ジンが出ていったので、グラスをさっと片づけ、ボーイの人に渡した。
いまだに心臓がドキドキしている。
今の会話でわかった。
ケビンさんはただここでお酒を飲んでるだけじゃなかった。
ここで何かの情報収集をしているんだ。
「あの…ケビンさん?」
「…。」
「メガネの日本人の男性から何か聞きたいの?」
「……。」
黙ってお酒を飲んでいたケビンさんは隣にいる私をチラリと見下ろした。
「私が今度席に行って、何か聞いてこようか?」
「…。」
ずっとダンマリのケビンさん。
一応考えてはいるような表情だ。
「私は新人だから…その人のこと知らないけど、新人だから色々質問できるかも。」
「…何が目的だ。メリットがユメにない。」
探るようにジロリと見られた。
「えっと…今のね、彼の雰囲気やケビンさんがかっこいいって思っちゃった。スパイみたい!こんなこと初めてだから今ワクワクしてるの。」
「…スパイ。…ワクワク。」
「ごめんなさい、遊びじゃないのに…でも、ケビンさんは私の最初のお客様だからやっぱり私にとって特別で。」
「…特別。」
ケビンさんのグラスを持ち、ハンカチで水滴を拭き、指先が触れるよう手渡した。
「何かお手伝い出来ることあれば言ってね?」
「…要求は。」
「うーん…じゃあ、これから先も指名してほしいな。たまにボトルも。わがまま言いすぎちゃったかな。」
「そのくらい、いくらでも。」
そう言って高いお酒を飲みもしないのに私につけてくれた。
「うちの組織、ある組織と取引したい。しかし、邪魔してくるやついる。それがメガネの日本人。」
「うん。たまにくるうちのお客さんだね?」
「そう。そのメガネ、人身売買してる。その情報掴んで潰したい。邪魔。」
以外とケビンさんはペラペラと話してくれた。
黒の組織とわかった時点で引くべきかと思ったが、ここまでわかったのだ。もう引けない。
メガネの日本人が、人身売買をしている。
恐らく彼が、梓さんが言っていた女性をソッチの世界に売り飛ばしていると人物だろう。