第98章 遭遇
動揺を悟られてはいけない。
焦ってはいけない。
目を合わせるな。
「こんな邪魔な女どもと飲んでどうする。」
「別に。一緒に、飲むだけ。」
「はっ。理解できねーな。」
ドサッと、間を空けてケビンさんの隣に座りった。
室内だというのに帽子は被ったままだ。
ーー本当に全身真っ黒だ。
タバコを取り出したが、私の席から遠いからライターで火をつけてあげることができない。
彼とは一度この世界に来た時、会っている。
彼が私の顔をはっきりと見て憶えているならかなりやばい状況だ。
だけど、ここで態度に出してしまっては悟られてしまう。
平常心を保ちつつ、私はジンの顔を見た。
「何かお飲みになりますか?」
「…。」
見下ろさせる冷たい視線。
背中に汗がつたうのを感じた。
「コルンと同じやつだ。」
「はい、かしこまりました。」
笑顔を絶やさず。
「お客さまが増えましたが、キャストも増やしますか?」
ジンが飲むためのウィスキーのロックを作りながら、ケビンさんに尋ねた。
「いや、ユメだけで、いい。他いらない。」
席を立ちテーブルをぐるりと回ると、ジンの近くに膝立ちし、お酒を差し出した。
「…。」
上から見下ろされる。
視線に気づき、私は彼に微笑み返した。
「バーボンのロックです。」
「…バーボンね。」
カラン、と音を立て、グラスを傾けた。
「コルン、この女は信用できんのか。」
「今までここでの会話を、外で話した様子ない。」
たしかに、ケビン…と呼んでいいのか、彼との会話は先輩や他の人たちに話したことはないが…。
今までケビンさんはそう言ったところも見ていたのか。
あまり何も考えてなさそうで、私の様子をうかがっていたのかと思うとゾッとした。