第91章 休暇 2
「ほら、話してるうちに着いたぞ。」
大きな木造の旅館に着き、ロータリーの方へと車を付けると、入り口から着物を着た男性たちがぞろぞろと出てきた。
ひぇ、高級そうだ。
車から降りて荷物を出すと、大きな荷物は全部その男性達が持ってくれた。
安室さんは自分の車の鍵を渡していた。
駐車場までスタッフの方が持って行ってくれるんだろう。
…すごい。こんな寝るだけのところで至れり尽くせりなんて、初めてだ。
あわあわと安室さんの後ろをついて歩いていると、くすくすと笑いながら私の方を振り向いた。
「堂々としてろ。」
「だって…ここまでとは思わなかった。はじめてだもん。」
「僕だって初めてさ。せっかくだからね。めぐみは座って待ってて、チェックインしてくるから。」
安室さんにそう言われ私はエントランスのソファに腰掛けた。
するとまた一人着物を着た女性が私の前に何やらジュースのようなものをテーブルに置いた。
「ウェルカムドリンクのブルーベリージュースでございます。」
うぇ…ウェ…ウェルカムドリンク!?
なにそれ!?飲んでいいの!?頼んでないけど!
「当県ではブルーベリーが名産なんですよ。ぜひお召し上がりください。」
「は、はいっ。」
オシャレなグラスを手にして一口口に含むと、ブルーベリーの酸味と甘さがふわっと広がり私は女性を見た。
「美味しいですっ!ありがとうございます!」
「お連れ様の分は後ほどお持ちしますね。」
仲居さんはにっこり笑ってまた奥へと戻って行った。
「なに飲んでるんだ?」
「なんか…なんとかドリンク。」
チェックインが終わった安室さんが財布をポケットにしまいながら、私の横に腰掛けた。
「あぁ…もしかしてウェルカムドリンク?」
「そう!それそれ。」
すると、安室さんの前に先程の仲居さんが同じブルーベリーのジュースを置いた。
「ここの名産なんだって。」
「へぇ。ありがとう。」
安室さんが仲居さんにお礼を言うと、仲居さんはぽっと顔を赤らめ、勇み足で戻って行った。
わかる。わかるよその気持ち。
安室さんの笑顔は破壊力あるもの。