第91章 休暇 2
「みて!すごい豪華だよ!」
「あぁ。」
「ここは、料理美味しそう!」
「あぁ。」
「ここは中心地から遠いねー。」
「あぁ。」
「もう、ちゃんと見てる?」
「いや、めぐみしか見てない。」
「…。」
パソコンの椅子に座って、温泉街の宿をクリックしていく安室さんの横で画面に向かって私が騒いでいる。
にこにこ笑う安室さんは横で私を見ていた。
「…画面を…見てください。」
「ふふ、はしゃぐめぐみ可愛くって。」
「安室さんの休暇だよ!」
「そうだな。…休暇の前からこんなに楽しいのは初めてだよ。」
「こういう旅行は準備段階からどれだけ楽しむかが重要だからね。」
「部屋食がいいな。」
「うんうん。」
「部屋に露天風呂ついてる。家族風呂ってやつか。いいな。」
「うんうん。」
「ツインよりダブルがいいな。」
「…部屋別がいいんじゃないの?」
「は?なんで?」
「ゆっくり一人で寝た方が休暇っぽい…」
「…。」
安室さんはじとっと椅子に座ったまま私を下から睨みつけるようにみている。
「部屋は僕がとっておく。」
「…へ?」
「いやー、めぐみの言う通り、準備段階から楽しいな。部屋でのことを想像しながら予約したりな。」
「…。」
カチカチっと、宿の画面を消すとにこにこ笑いながら立ち上がった。
「さ、僕は夜もやることあるから帰るよ。」
「う、うん…。宿…お願いします。」
「あぁ、任せといて。」
帰る準備をする安室さんに私は昨日の赤井さんの紙袋を思い出した。
「そうだ、赤井さん。」
「…なに。」
一気に声色が変わる。
…どんだけ。
「預かったものがあるの。」
「まて。会ったのか。」
「今はその話はしてません。」
「どこで会った。」
会話にならない。
私は安室さんを無視してどんどん話を進めた。