第8章 心の休む場所
「元気ですよ、最初から。」
元気になったのなら帰ろうと、私がいうと、安室さんは最初から元気だと言った。
ニコニコ笑って私の両手を握って押し返してくる。
私は更に力を込めて全体重を乗せて安室さんを押してやった。(もちろんびくともしない。)
「嘘つかないでください。僕傷ついてるんで慰めてって雰囲気で裏口開けたくせに。」
「…。演技ですよ、演技。」
「あー、はいはい。そうですね。トレインではケガも何もなくてよかったですね。コナン君たちと一緒ですか?」
私がそう言うと、安室さんが力を抜いたせいで、私の力の行き場がなくなり前のめりになってしまった。
「誰に聞いたんですか?」
鼻を安室さんの胸にぶつけてしまい、つーんとなってしまった。
声色が少し低くなった安室さんを見上げると笑っていない。あれ、秘密だったんだろうか。
「え?安室さん自分で名古屋行くって言ったから…そうだと思ったんですけど、違いました?コナン君たちのことは梓さんが聞いてて、それに安室さんから煙の匂いがしたから…」
周りの顔見知りが揃いも揃ってミステリートレインで名古屋行くって聞いたから、てっきりみんなと一緒だと思っていた。
正直にそう言うと、安室さんはそうですか、と、またいつもの笑顔になった。
「あれだけニュースになったのに、特に何があったとか聞かないんですね。」
「え?」
安室さんは自分のことはあまり話さない。時事問題や世間話、特にうんちく。そんなことはよく話すけど、仕事の内容とかは聞いたことがない。探偵とかしていると、依頼主のこともあるし、話せないことがあるんだろうと思って、特に聞いたこともなかったが、もしかして、本当は話したかったのだろうか。
安室さん話好きっぽいもんね。
「聞きたくないわけでは…、聞きますよ?何かあったんですか?また、無茶ばっかりしたんでしょう。」
「はぁ…、やっぱり、いいですね。貴方は。」
「はぁ??何が?会話になってないですよ。」
「僕を思って話しやすくしようとしてくれてるってのはよくわかりました。貴方のことだから、探偵業のことは話せないと思って聞かなかったんでしょう?内容は深く聞かず、でも思いを受け取ろうとしてくれる。」
頭をがしがしと撫でられ、今度は正面からぎゅーっと抱きしめられた。