第86章 彼の仕事【終章】
ヘルメットを被ってない安室さんを乗せ,ゆっくり走行したため思ったよりだいぶん遅くに家に着いた。
家に着いてすぐに手当てをしようと安室さんが上の白い服を脱いだ。
血で染まっている。
相変わらずいつも酷い怪我だ。
前のアザもまだうっすら残ってるのに。
これだけ深いとシャワーは無理だと判断して、私はお湯を用意した。
勝手に桶やタオルを準備して、畳の部屋で疲れ切って座る安室さんの横にそれらをおいた。
「身体拭くね?」
「自分でするよ。」
「いいから。あむ…降谷さんは今は何も考えずにただぼーっと,座ってて。」
「…ありがとう。」
顔は後でも洗えるって思ったけど、せっかくだしイケメンの顔面触れるし、タオルで最初に拭いた。
砂ぼこりがたくさんついてる。
「警視庁で別れたはずなのに何であそこにいたの?」
「あー……ハクチョウが…ぶつかりそうだったから。」
難しく説明すると私がわかんないだろうって思って、きっと簡単にしてくれようとしたんだけど、余計にわかんなかった。
「ん、そっか。色々あったんだね。」
「それはもう色々。本当に…色々。」
「あそこまでどうやっていったの?車は?」
「燃えて大破して沈んだ。」
「あ。…そう。」
え。
東京湾に?
降谷さんの愛車が…
「それはツラいね。私も色々思い出あったのに。」
「いや、めぐみが初めて乗った車とは違う。あれは三台目だ。」
「あ。…そう。気付かなかった。」
一体何度大破させたんだろう。
身体を拭き終わり、腕を消毒すると、ガーゼを当て包帯を巻いていく。
もう手慣れたものだ。
怪我の数は多くは無いが、腕の傷は結構大きい。
「結構傷深いね。…熱が出ないといいけど。」
「薬飲んでおくよ。」
包帯を巻き終わると、降谷さんは新しいシャツを着た。
「あーーー、つかれたー。やっと終わったー。」
降谷さんは気の抜けた声を出すと、自分のベッドに倒れ込むようにうつ伏せになった。
「マッサージでもしましょうか?」
「んー?そんなのされたことないな。」
「気持ちいいかもよ?あ、でもアザあるから…」
「やってみて。」
うつ伏せのまま、降谷さんは私をチラリと見た。