第86章 彼の仕事【終章】
ベッドでうつ伏せになる降谷さんの横に、わたしはゆっくりと腰を下ろした。
さっき背中を見たときにあった、アザの場所を避けながら私は降谷さんの背中に手を伸ばす。
組にいたとき、おっさんたちのマッサージは良くさせられた。
いや、いやらしい意味じゃなく。
肩揉め!ってよく言われたから。
ぐっ、と力をこめて肩や肩甲骨のあたりを押し込んだ。
「わぁ!かたいよ?ガッチガチ。すごくかたい。」
「…。」
「もう少し優しく触った方がいい?」
「…。」
「かたくなったところ、ほぐしたいな。気持ちいい?」
「…ちょ…黙ってやろうか。」
「え?」
黙れって言われたから私は仕方なく黙々と降谷さんの背中や肩や脚をマッサージしていった。
ふくらはぎは苦手らしく触ることを禁止された。
「明日のご予定は?」
しばらくマッサージすると、降谷さんは満足したらしく仰向けになってぼーっと横に座る私の髪の毛を撫でていた。
「明日はポアロにいくよ。毛利先生に会わないと。」
「…そっか。じゃあ、朝起こしてあげるから、寝てていいよ。」
「…ん。」
降谷さんの前髪をさらりと撫でると、やっと降谷さんは目を閉じた。
「おやすみなさい。……お疲れ様でした。」